チェスターNEWS -2017/05/16-
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相続人が老人ホーム等に入居した場合は小規模宅地の特例が使えない!

相続税の計算上、被相続人の居住の用に供されていた宅地等については、一定の要件を満たすことにより、評価額を最大で80%減額することができる特例(小規模宅地等の特例)があります。この特例は、被相続人の居住用宅地等であった不動産で、その不動産を取得する相続人等が一定の要件を満たすことで適用を受けることが出来ます。今回はこの中で被相続人が老人ホーム等に入居していた場合の取り扱いについて解説致します。
【居住用宅地等の要件】
被相続人の居住用宅地等であったかどうかについては、被相続人がその宅地等を生活の拠点としていたかどうかで判断することになります。
この場合において、被相続人が老人ホーム等に入居していた場合には、生活の拠点がどこにあったかが問題とされていましたが、平成25年度税制改正において、以下の要件を満たす場合には、老人ホーム等に入居していた場合にも、入居前に居住していた宅地等が居住用宅地等に該当すると認められることになりました。
《被相続人が老人ホーム等に入居していた場合の要件》
1.相続開始時点で要介護又は要支援認定等を受けていたこと
2.老人福祉法等に規定する一定の施設に入居していたこと
3.被相続人の居住していた建物を事業用や被相続人または被相続人と生計を一にする親族以外の居住用に供していないこと
【居住用宅地等を取得した者の要件】
被相続人の居住用宅地等に該当する場合には、次にその不動産を取得する方が要件を満たすかの確認が必要となります。この要件は取得者と被相続人の関係に応じて以下の区分に分けられることになります。
《取得者の要件》
1.配偶者の場合
特に要件はありません。
2.同居親族の場合
相続開始時から申告期限まで、引き続きその家屋に居住し、かつ、その宅地等を申告期限まで所有し続けること
3.別居親族の場合
①日本に住所または国籍を有する親族が取得し、その宅地等を申告期限まで所有し続けること
②被相続人の配偶者または被相続人と同居していた法定相続人がいないこと
③相続開始前3年以内に日本国内にあるその別居親族または別居親族の配偶者の所有する家屋に居住したことがないこと
上記が基本的な適用要件となりますが、相続人についても老人ホーム等に入居した場合に適用が出来るのか疑問が生じておりました。具体的には以下のようなケースが想定されます。
例)
被相続人甲(平成29年相続開始)
相続人A(甲の唯一の相続人である妹)
平成25年に共に要介護認定を受け、老人ホームへ入居
Aが平成25年まで甲と同居していた家屋(相続開始時点で空家)とその敷地を取得した場合に、小規模宅地等の特例は適用できるのでしょうか。
前述の要件に照らし合わせて検討していきます。
1.居住用宅地等の判定
甲が要介護認定を受け、老人ホーム(施設要件は満たしているものとします)に入居しており、相続開始時点で空家となっていますので、甲の居住用宅地等である要件は満たすことになります。
2.取得者の判定
次に取得者であるAの要件について確認します。
Aが適用を受けるためには、同居親族に該当し要件を満たす場合か、別居親族に該当し要件を満たす場合に限られます。
Aは平成25年まで甲と同居していましたが、その後要介護認定を受けて老人ホームへ入居しています。居住用宅地等の判定とは異なり、取得者の要件では老人ホームへ入居した場合について特に規定されていないことから、老人ホームへ入居した時点で同居要件は満たさないことになり、同居親族として特例を適用することはできないこととなります。ただし、別居親族の要件を満たすことができる場合には適用可能となりますので、適用可否の判定には留意する必要があります。


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