チェスターNEWS  -2017/06/13-

さまざまな税についてのニュースを発信いたします。

関連キーワード:

判例からみるマンション評価における財産評価基本通達の意義と問題点

判例からみるマンション評価における財産評価基本通達の意義と問題点

東京高裁平成27年12月17日判決の判例から相続税における財産評価基本通達の位置づけと、現状における問題点を考えていきましょう。

本判決は、贈与者所有のマンションが建て替え計画中に贈与がありその評価の方法について争ったものです。
原告である納税者は、当該マンションは建築後相当年数が経っていることから不動産鑑定会社へ依頼した鑑定価額を時価として贈与税申告を行ったのに対し、原処分庁は財産評価基本通達に基づいた評価額を贈与税申告における時価として更正を行いました。なお、納税者の主張する鑑定価額は、建て替えが実際に行われるか不透明であったとして鑑定価額を算出しています。

納税者は「財産評価基本通達に基づくマンションの評価は実際の売買した際の価額と大きな乖離があるため適切な贈与時の時価を反映していない」として鑑定価額による申告の合理性を主張しました。

こういった主張は相続実務の現場でもよく聞かれますが、ここで財産評価基本通達の意義について再考してみましょう。
財産評価基本通達に限らず、法人税法基本通達や所得税法基本通達のような国税庁が発出する税務通達にはどのような法的性格があるのでしょうか。
通達は国家行政組織法14条2項において「各省大臣、各委員会及び各庁の長官は、その機関の所掌事務について、命令又は示達するため、所管の諸機関及び職員に対し、訓令又は通達を発することができる。」と定められています。このことからも、税務通達とは国税庁長から国税局長他へ発せられたものであって、納税者を拘束する直接法的な意味はないと考えられます。

それでは納税者は財産評価基本通達を守らなくていいのかと言えばそうではありません。本件における裁判所の判断でもこのことに言及されています(以下「」は判決文及び判決要旨からの引用です)。
相続税・贈与税の課税対象となる財産は「多種多様であり、時価の評価が必ずしも容易なことではなく、評価に関与する者次第で個人差があり得るため」、納税者が個別に財産評価をおこなうことは課税庁の事務負担が過大となり課税事務の効率的な運用が難しいものになります。そのため、「納税者間の公平の確保、納税者及び課税庁双方の便宜、経費の節減等の観点から、評価に関する通達により全国一律の統一的な評価の方法を定めることを予定し、これにより財産の評価がされることを当然の前提とする趣旨であると解」されるとしています。
したがって財産評価基本通達は、「適正な時価を適切に算定することのできない特段の事情があるときを除き」、一般的な合理性に疑いを差し込む余地は特段見当たらないものとして、納税者が個別の評価方法により評価をすることはたとえ「それ自体が相続税法22条の定める時価として許容範囲にあるといい得るものであったとしても、租税平等主義に反するものとして許されないものというべきである」と判断されました。

この判決自体は従前の裁判例の延長ともいえるものであって、特段珍しいものだとは言えません。しかし、中古のマンションの時価について判断した事例は比較的少ないためどのような判決になるか興味深いものでしたが、結論としては現状の財産評価基本通達の支持でした。
マンションの評価については、近年タワーマンション関連の話題もあり論点にあがることも多いのですが、下記のような合理性の疑義があります。

①タワーマンションのような低層階と高層階において売買価額に差があるにも関わらず、財産評価基本通達では評価額に考慮されない。

②広大な土地については、道路等の公益的施設用地負担を加味した広大地の評価減があるにも関わらず、マンション用地においては同様な道路・公園等があったとしても同様の減額措置がなされていない。

③貸宅地については、借主に借地権がない場合でもその処分に制約があるものとして自用地評価額から20%の評価減が行われるのに対し、マンションも共有者全員の同意がなければその処分に制約があるにも関わらず同様の減額措置がなされていない。

各判例にて、租税平等主義の基に財産評価基本通達の合理性を支持しているのであれば、現在広く流通されているマンションの評価についても、財産評価基本通達において他の財産評価との整合性を整えるべきでしょう。今後のマンションの評価方法の検討の上でもう一歩踏み込んだ判断がなかったことが残念です。

監修者 福留正明

【次の記事】:増改築工事に伴う価値増加分が反映されていない貸家はどう評価する?

【前の記事】:実務家注目!定期預金も遺産分割の対象に。最高裁が判断

« 一覧へ戻る

今すぐお問合せ 0120-390-203 PHS・携帯OK 【土日・夜間・訪問対応も可】平日9時~21時、土日9時~17時 メールでのお問合せ info@chester-tax.com

相続税に関する無料個別相談会開催中 お申込はこちら

出版書籍

『相続はこうしてやりなさい』これ1冊で相続のことが全て分かる!!

『相続はこうしてやりなさい』
これ1冊で相続のことが全て分かる!!

相続税専門
税理士法人チェスター(著)
出版社:ダイヤモンド社

『「華麗なる一族」から学ぶ相続の基礎知識』ミステリー小説で相続が早わかり

『「華麗なる一族」から学ぶ相続の基礎知識』
ミステリー小説で相続が早わかり

相続税専門
税理士法人チェスター(著)
出版社:亜紀書房

税理士が本当に知りたい相続相談頻出ケーススタディQ&A 1,000件を超える相談実績から“よくある事例”を厳選。

『税理士が本当に知りたい相続相談頻出ケーススタディQ&A』
1,000件を超える相談実績から“よくある事例”を厳選。

相続税専門
税理士法人チェスター(著)
出版社:清文社

  • 無料進呈 相続税申告必要資料準備ガイド
  • 税理士法人チェスター物語
  • 取材・セミナー履歴

    今まで当社がお手伝いさせていただいた新聞・雑誌の記事執筆、テレビ・CM出演、セミナーのご依頼等の履歴のページです。

  • お客様の声

    今まで当社がお手伝いさせていただいたお客様の中から、アンケートを一部ご紹介させていただきます。

  • 選ばれるチェスターの品質
  • れお君の相続徒然日記
  • 税理士 伊原慶のブログ
  • ビジョナリーバナー画像
  • Googleインドアビュー事務所内見学