チェスターNEWS -2015/05/29-
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相続税改正と消費税増税の関係性

相続税改正と消費税増税
今年“資産家”を対象としていた相続税に大きな改正がありました。相続税はバブル以降、四半世紀の間に大小5回の改正がありましたが、いずれも基礎控除の拡大や各種控除限度額のアップ、税率の引下げなど国民の負担を軽減する方向での改正でした。
ところが27年1月からの改正は平成以降で初めて課税強化の方向へ舵を切っています。
また、消費税は昨年8%に税率がアップされ、さらに29年には10%への引き上げが予定されています。この相続税改正と消費税の税率アップの背景には、日本の税制をどのような方向に持っていき、国民の負担と受益とのバランスをどのようにするかという点で深いつながりがあります。
社会保障と税の一体改革
「社会保障と税の一体改革」という言葉よく耳にされていると思います。社会保障を充実・安定化させ、そのための安定財源を確保するとともに、財政の健全化を同時に達成しようとするものです。
日本の財政赤字は累積1千兆円を超え、先進国の中でも突出しています。さらに少子化によりこれから現役世代が減少していく中で、急速に高齢化している日本社会にとってふさわしい税制はどのようなものであるかと議論を国が行い、社会保障と税の一体改革という道筋を示しました。福祉を維持、発展させつつ、財政を健全化させる過程の中で消費税や相続税の増税、さらには所得税の税率引き上げ等が行われています。
国の財政は年々悪化しており、平成の初めには歳出の8割以上を税収でまかなっていたものが、近年は歳出の45%程度の税収しか確保されていません。そのような日本の状況を鑑み、消費税は税率を10%まで引き上げが予定され、相続税の最高税率は50%(6段階)から55%(8段階)に引き上げられ、所得税も40%から45%引き上げが行われました。法人税は国際競争力を確保するため、減税の方向ですが、今後一定の受益を得るためには負担増はやむを得ない所です。
高齢化と少子化と消費税
高齢化と少子化が急ピッチで進んでいる日本では、国の財政も毎年厳しい状況が続いています。消費税は毎年増加している社会保障財源を確保のため税率アップしましたが、高齢化社会の中で現役世代が減少していく中、国民全体で広く負担する消費税は、税収が安定していることから一般会計全体の日本の主力財源になっています。国の27年度予算では消費税が歳入全体の17%強を占め、税目別で所得税を抜き税収のトップになっています。
一般会計税収、歳出総額及び公債の発行額の推移:「財務省の政策」財務省HPより

格差是正
最近格差是正という言葉をよく耳にします。所得格差といえば一部の高収入の富裕層に富が集まり、富める人はさらに豊かに、逆に懸命に働いても豊かにならない人がいるのも事実です。相続税については一生かかって稼いだ財産や親から引き継いだ財産を、世代が変わるところで再配分していこうというものです。
下の図の中で、折れ線グラフは亡くなられた方のうち相続税が課税された方の割合を示しています。相続税を課税された方の割合はピーク時7.9%だったものが4.1%にまで落ちています。これ資産価値の下落や控除類の拡充によっては相続税額としてもピーク時の半分近くまで減少しています。
生活の本拠となる自宅や仕事場については納税のため事業が立ち行かなくなったり、売却したりすることのないように配慮することは大事です。
一方、相続税の課税によって格差是正に一定の効果を波及させ、応分の負担をしてもらうことで、国は将来の日本をより多くの国民が快適に暮らせる仕組み作りを税制を通じて行っているのが現状です。
年度別相続税の納税額と課税割合の推移:財務省 我が国の税制の概要 より


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