相続人の数に算入される養子の数の否認
相続税の課税にあたっては、3,000万円+法定相続人の数×600万円で計算された金額が、基礎控除として課税対象から除かれます。また、生命保険金や死亡退職金についても、法定相続人が増えると非課税枠が増える仕組みになっています。
過去には、養子を多数迎え入れることで法定相続人を増やし、課税を免れる事例が多く見られました。それでは課税する上で問題があることから、相続税法では養子の数に一定の制限が設けられました。
1.法定相続人に含めることができる養子の数
相続税法では、法定相続人に含めることができる養子の数を次のように定めています。
● 実子がいる場合・・・養子のうち1人まで
● 実子がいない場合・・・養子のうち2人まで
養子でも次のような場合は実子として数えます。
● 特別養子縁組による特別養子。
● 配偶者の実子で被相続人の養子になった者。いわゆる連れ子養子。
● 代襲相続によって相続人となった養子。
この制限は相続税法上のものであって、民法では養子の数は制限されていません。
2.法定相続人に含めることができる養子の数の否認
相続税法第63条では、法定相続人に含めることができる養子の数の否認について定めています。養子縁組が不当に税額を減少させる結果となった場合は、税務署の更正や決定によって養子の人数を除いて計算することができる旨が定められています。
相続が発生する直前に養子縁組をしたり、被相続人が意思表示できない状態であるにもかかわらず養子縁組がされていたりなど、理由が正当でない場合は否認される可能性があります。しかし、養子縁組をした理由が正当でないかどうかの判断については、難しいものがあります。
被相続人が亡くなる直前に長男の妻と養子縁組をしたと仮定します。その養子縁組が以前から考えられていたことで、実際に養子縁組をしたのが亡くなる直前だったにすぎないのか、相続税の負担を減らす目的で急いで養子縁組をしたのかは、被相続人が亡くなった以上、判断は難しいものです。
そのため、実際に養子の数が否認された事例はないとも言われていますが、規定がある以上は留意する必要はあるでしょう。
なお、この規定はあくまでも相続税の課税価格の計算のためのものです。養子縁組の効力や養子の相続人としての地位など民法上の権利を否定するものではありません。
また、一部の養子について相続税の不当な減少につながる場合は、その不当な減少の原因となった養子だけを除いて計算することとされています。他の養子は法定相続人の数に含めて計算します。
(相続人の数に算入される養子の数の否認)
第63条 第15条第2項各号に掲げる場合において当該各号に定める養子の数を同項の相続人の数に算入することが、相続税の負担を不当に減少させる結果となると認められる場合においては、税務署長は、相続税についての更正又は決定に際し、税務署長の認めるところにより、当該養子の数を当該相続人の数に算入しないで相続税の課税価格(第19条又は第21条の14から第21条の18までの規定の適用がある場合には、これらの規定により相続税の課税価格とみなされた金額)及び相続税額を計算することができる。
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