失踪宣告が行われたことに伴い死亡退職金の支払いがあった場合の課税関係
死亡退職金というのは、従業員が死亡したときに支払われる退職金です。このお金は死亡と同時に支払われることになっており、被相続人の財産とみなされるため、基本的には相続税の対象となります。
では、この死亡退職金の支払いが死亡時ではなかった場合、どうなるのでしょうか? 例えば、失踪して数年経った後に死亡扱いとなった場合を考えてみましょう。この場合、死亡退職金が支払われるのは相続開始から数年経っていることが大半です。この死亡退職金は、相続税の課税対象になるのでしょうか?
詳しく解説します。
失踪宣告が行われたことで支払われる死亡退職金への課税
相続財産は、原則として相続開始時(被相続人が死亡したとき)に被相続人が持っていた財産に対して課税されます。そのため、被相続人の死亡後に支払われる財産については、その性質などによって課税されるかどうかが変わってきます。
(1)死亡退職金
死亡後に支払われる財産の中でも、「被相続人が受け取ることが会社規定などで決まっている死亡時の退職手当金」や「死亡後3年以内に被相続人に支給されることが決まったもの」については、相続財産とみなされるのです。
ただ、この死亡退職金について、死亡後3年以上経過してから確認された場合はどうなるのでしょうか? 具体的には、被相続人が行方不明になって、失踪宣告によって死亡したことになった場合です。この場合について、少し詳しく解説しましょう。
(2)失踪宣告
失踪宣告というのは、行方が分からず生死不明の人を、法律上「死亡したものとみなす」制度です。
この失踪宣告は、行方不明になって帰ってくる見込みがない人(不在者)について、その利害関係者が裁判所に申し立てることで審理されます。裁判所の調査の結果、不在者との連絡などが一切取れないことが判明すると、裁判所は生存の届け出(不在者自身が生存していることを届ける、もしくは不在者を知っている人が生存を届け出る)の勧告を行います。その後一定期間(3ヶ月以上)経っても届け出がなかった場合、裁判所は不在者の失踪宣告を確定させます。
ただし、死亡した日については失踪宣告が確定した日ではなく、不在者の生死が不明になった日から7年となった日となります。つまり、生死不明になってから11年後に失踪宣告が確定した場合、死亡してから4年経っていることになるわけです。
(3)失踪宣告が行われたことに伴い死亡退職金の支払いがあった場合
生死不明になってから10年目までに失踪宣告が確定した場合、死亡したことが確定してから3年以内の時点で死亡退職金が支払われることになりますので、あまり悩むことはありません。しかし、11年以上経ってから失踪宣告が確定した場合は、どうなるでしょうか?
この場合、死亡したことが確定してから4年以上経ってから支払われることになりますので、相続税の対象外になるように感じるかもしれません。
しかし「会社規定などで死亡退職金の支払いが決まっていた場合」は、支払いそのものが死亡後3年を超えてから行われたとしても、死亡と同時に支払いが確定されていると解釈されます。つまり、死亡と同時に支払うことが確定してるため、相続税の対象なのです。
つまり、会社規定で決まっていたものは、支払いがいつになろうが相続税の対象になるわけです。
なお、逆に言えば、会社規定がなかった場合に、被相続人死亡後3年以上経ってから支給が決まった死亡退職金については、相続税の対象外になります。この場合、相続人に相続税はかかりません。しかし一時所得となりますので、所得税が課せられることになります。
【参考】
国税庁 質疑応答事例 失踪宣告が行われたことに伴い死亡退職金の支払いがあった場合の課税関係
裁判所 裁判手続の案内 失踪宣告
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