相続時精算課税等に係る贈与税の申告内容の開示等

自らが生存中に築いた財産は、出来るだけ節税効果の高い方法で子供や孫に残してあげたいものです。

従来までは年間110万円以上の贈与には必ず贈与税が掛かっていましたが、現在は「相続時精算課税制度」というものが導入され、この制度を選択すれば一定の条件下で2,500万円までは非課税で贈与することが出来るようになりました。

この相続時精算課税制度を利用した贈与税の申告内容は、贈与者が死亡して相続が発生した場合に相続人等が開示請求をすることが出来ます。相続人の相続税申告に必要な場合等があるからです。相続時精算課税制度はその名のとおり、贈与時は2500万円まで贈与税がかかりませんが相続発生時に相続税の対象となってしまうため金額を知る必要があるのです。

本稿では生前贈与時に用いられる「暦年課税」と「相続時精算課税」の違い、および相続時精算課税に係る贈与税の申告内容の開示請求について解説します。

1.「相続」と「贈与」

 自らが築いた財産を子や孫といった後世に承継していくための一般的な手段は「相続」です。人が亡くなれば、原則として財産は法定相続人が相続することになります(遺言がある場合など例外有)。しかし自分が生きているうちに財産を譲っておきたいという場合、「贈与」という形を採ることも出来ます。

 相続の際に相続税が掛かるように、贈与の際も贈与税という税金が掛かります。そして贈与税の課税方法には「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つの方法があり、財産をもらう人は贈与してくれた人ごとに課税方法を選択することが出来ます。以下で2つの課税方法を詳しくみてみましょう。

(1)暦年課税

 贈与税の暦年課税とは、1年間の贈与額に対して1年ごとに課税する、という方式です。1年間の贈与額が110万円以下なら贈与税は掛かりません。これを超える分については贈与税が発生します。贈与税の暦年課税の計算式は以下の通りです。
  
  贈与税額=(課税価格-110万円)×税率

 税率は基礎控除を差し引いた後の課税価格によって以下のように変わります。最高税率は55%です。

相続時精算課税等に係る贈与税の申告内容の開示等

(2)相続時精算課税

 一方の相続時精算課税とは簡単に言うと「2,500万円に達するまでは何度贈与をしても贈与税の必要はなく、これを超える分については一律20%の贈与税が課税、ただし贈与者が亡くなり相続が発生した際に贈与価格を相続財産に加えて相続税を課税する」という制度です。

 この制度は親世代から子世代、孫世代へのスムーズな財産承継を促進するために2003年に導入されました。平均寿命が延びている昨今、遺産相続で被相続人が財産を承継する年齢も上昇傾向にあったため、より若年世代への財産の承継をスムーズにし、社会を活性化する目的があると言われています。

(3)相続時精算課税を利用するための要件

相続時精算課税を利用するためには、まず贈与者は贈与をする年の1月1日の時点で60歳以上である必要があります。受贈者については以下の通りです。
 
 (1) 次のいずれかに該当する者であること。
イ. 贈与を受けた時に日本国内に住所を有すること。
ロ. 贈与を受けた時に日本国内に住所を有しないものの日本国籍を有し、かつ、受贈者又は贈与者がその贈与前5年以内に日本国内に住所を有したことがあること。
ハ. 贈与を受けた時に、日本国内に住所も日本国籍も有しないが、贈与者が日本国内に住所を有している。
(2) 贈与者の直系卑属である推定相続人であること。
(3) 贈与者の孫であること。
(4) 贈与を受けた年の1月1日現在において20歳以上であること。

 つまり60歳以上の人から20歳以上の子供か孫への贈与に限る、ということです。

(4)暦年課税と相続時精算課税のメリットとデメリット

 暦年課税と相続時精算課税のどちらを選んだ方が得かはケースバイケースなので一概には言えません。暦年課税のメリットは何と言っても「何度でも利用出来る」ということです。受贈者1人ごとに年110万円までは非課税なので、例えば子供が2人いれば1人110万円ずつ合計220万円までは非課税です。これを10年継続すれば2,200万円を非課税で贈与出来ます。ただ、場合によってはこの「10年継続」というのは手間の問題も含めて
デメリットになるでしょう。

 相続時精算課税のメリットは何といっても「2,500万円」という非課税枠の大きさです。多額の現金や大きな不動産を1度に贈与する際に非常に有効です。デメリットとしては「60歳以上の人から20歳以上の子供か孫への贈与」に限られるので、若年者が贈与者になることや幼年者が受贈者になることが出来ないという点、贈与税額が110万円以下であっても贈与をした際には必ず申告をしなくてはいけない点、1度相続時精算課税を選択すると暦年課税に戻ることが出来ない点などが考えられます。

2.相続時精算課税等に係る贈与税の申告内容の開示

相続時精算課税を利用して贈与税を申告した場合、この申告内容は開示請求をすることが出来ます。

(1)開示請求が出来る人

開示請求は

・相続若しくは遺贈(遺言書による遺産相続)又は相続時精算課税の適用を受ける財産を特定贈与者である被相続人からの贈与により取得した者
・相続税の申告書を提出すべき者が当該申告書の提出前に死亡した場合において相続税の納付義務を承継した者
・相続時精算課税の適用に伴う権利義務を承継した者

 以上の者が出来ることになっています。例えば父親が亡くなり兄弟3人が法定相続人で、長男が相続時精算課税制度を利用して財産を生前贈与されていて贈与税を申告していた場合、次男や三男は長男の申告内容の開示請求が出来る、ということです。開示請求の対象となるのは「相続開始前3年以内の暦年課税に関わる贈与分」と「相続時精算課税制度に関わる贈与分」です。

(2)なぜ開示請求が出来るようになっているのか

 相続人が複数いる場合においては、自分以外の相続人が被相続人から生前に贈与を受けた財産が把握出来ないと、相続財産の把握や相続税の計算が出来ないからです。

例えば上記の兄弟3人の例で、相続時精算課税を利用して財産を生前贈与されていた長男が、その内容を包み隠さず正直に話していれば問題はないでしょう。しかしそうでない場合、次男と三男は税務署に開示請求をすることで3年以内の贈与分、および相続時精算課税制度で贈与された分を把握することが出来るわけです。

チェスター相続クラブ

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