未分割の場合の課税価格(相続時精算課税適用財産がある場合)
相続税の申告期限内に遺産分割協議が纏まらない場合には、課税価額の法定相続分に基づいて計算した相続税額で、期限内に仮に申告・納税を行います。では、この場合で、相続財産に相続時精算課税適用財産が含まれる場合、課税価額の法定相続分はどのように計算されるのでしょうか。以下では、これについて解説します。
相続税の申告期限までに遺産分割協議が纏まらない場合について
本題に入る前に、相続税の申告期限までに遺産分割協議が纏まらない(未分割)場合について解説します。
相続税の申告期限は、原則として、相続人が死亡した日の翌日から起算して10か月目の日です。しかし、相続人間の遺産分割協議が纏まらない場合には、その期限までに、遺産の配分方法が決まらない場合もあります。
その場合には、とりあえず、各共同相続人が法定相続分の相続財産を取得したものとして、
相続税額を計算し、その税額で期限内に申告及び納税を行います。
そして、後日、遺産分割協議が纏まった場合には、その協議の結果による相続財産の配分に基づいて、各相続人の相続税額の再計算し、修正申告を行います。その結果、納税額に不足がある場合には、追加分の納税を行い、過払いの税金がある場合には、その金額の還付を受けます。
相続時精算課税適用財産が「生計の資本」しての贈与財産である場合
本題に入る前に、さらにもう1つ、相続に関する民法の規定について解説します。
民法第903条では、「婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として」としての贈与である場合には、その贈与財産の価額は、贈与者に相続があった場合に、相続税の課税価額に含めると規定しています。
相続時精算課税制度を利用した贈与の場合、「生計の資本」としての贈与であれば、相続時精算課税制度の規定の他、民法の規定によっても、その贈与財産の価額は相続税の課税価額に含まれます。
また、生計の資本としての贈与であれば、同時に特別受益財産にも該当します。すると、同じく民法第903条の規定によって、相続財産の法定相続分の計算の際には、各人に帰属する法定相続分から各人が受けた特別受益財産の価額は控除します。
未分割の場合の課税価額(相続時精算課税適用財産がある場合)
被相続人が生前に、相続時精算課税制度を利用して推定相続人に対して贈与を行っていた場合には、相続が開始し、推定相続人がそのまま相続人となる場合には、当該贈与財産は、
相続税の課税価額に含めます。
また、相続税の申告期限までに遺産分割が定まらない場合には、法定相続分により相続税を計算して、期限内に仮の申告・納税を行い、遺産分割が定まった後に、修正申告及び税金の追加納税や還付手続きを行います。
では、申告期限までに、遺産分割が定まらない場合で、かつ、相続財産に相続時精算課税適用財産(生計の資本としての贈与にかかるもの)がある場合には、各法定相続人に帰属する課税価額の法定相続分の計算はどのように行うのでしょうか。
国税庁の質疑応答「未分割の場合の課税価額(相続時精算課税適用財産がある場合)」では、
この問題に対して次のように回答しています。
まず、相続税の課税価額には、生計の資本として受けた相続時精算課税制度適用財産を含めて計算します。そして、その結果である相続税の課税価額に、各法定相続人の法定相続分を乗じます。
そして、相続人のうち、生計の資本として相続時精算課税制度適用財産を受けた相続人については、相続税の課税価額×法定相続分の金額から、当該贈与財産の価額を特別受益として控除し、その残額がその相続人に帰属する課税価額の法定相続分となります。
一方、相続人のうち、生計の資本として相続時精算課税制度適用財産を受けなかった相続人については、相続税の課税価額×法定相続分の金額がそのままその相続人に帰属する課税価額の法定相続分となります。
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