贈与税の延納年割額

相続税や贈与税は、現金での一括納付が原則です。
すでに相応の現金を持っていたり、相続財産が現金や換金しやすいものであったりすれば問題はありません。しかし、そもそも現金を持っていない人が不動産や芸術品などの換金しにくいものや手放しにくいものを相続したり贈与されたりした場合は、相続税や贈与税の納期限までに現金を準備できないかもしれません。
そのため、相続税法には「延納」という、相続税を分割払いできる制度があります。基本的には、相続税と贈与税で変わりのない制度ですが、厳密には違っているところがありますので、詳しく解説します。

相続税と贈与税の延納

延納を申請するにあたっては、以下のような条件があります。これらの条件を満たしてはじめて審議してもらえるのです。

・納税金額が10万円を超えていること
・金銭で一括納付することが難しい理由があること
・担保を提供すること
・納期限までに、延納申請書に担保提供関係書類を添付して税務署長に提出すること

これらの条件自体は同じですが、相続税と贈与税で違っている部分があります。それは、延納できる金額の限度と担保が必要な最低金額です。

(1)相続税の延納条件

相続税の延納の申請を行うには、上述した条件に加えて、以下の条件があります。

・納付が困難となっている金額を限度として「延納」を行うこと

これはつまり、納期限までに払うことができない金額だけ、年割して払ってもいいという条件があるわけです。そしてこの「納期限までに払うことができない金額」は、相続税基本通達38-2で以下のように規定されています。

延納の許可限度額=A-{(B+C+D)-([E×3]+F)}

AからFまでは、それぞれ以下のように定義されています。

A …… 相続税納税額
B …… 納期限に納税者が持っている現金
C …… 納期限に納税者が持っている預貯金
D …… 納期限に納税者が持っている換金しやすい財産
E …… 納税者の1ヶ月の生活費
F …… 納税者が営んでいる事業の運転資金

つまり、3ヶ月分の生活費と事業運転資金を残したすべての現金(換金できる財産も含む)はすべて納税し、その上で払いきれない金額のみ延納することができるということを意味しています。

また、担保については必ず必要なわけではなく、「延納年割額が50万円未満」で、「延納期間が3年以下」の場合には必要ないことになっています。

(2)贈与税の延納条件

上記のように、相続税を延納しようとする場合、延納年割額の金額に厳しい上限が課せられています。しかし、贈与税についてはその上限がないことが、相続税基本通達38-11に規定されているのです。
そのため、贈与税については全額延納することが可能ということになります。しかし、相応の金額になりますので利子税もそれなりに膨らみますので、延納する金額は少ないに越したことはありません。

また、担保についても贈与税のほうが条件が緩くなっており、「延納年割額が100万円未満」で、「延納期間が3年以下」の場合には必要ないことになっています。

(3)その他の違い

これだけ見れば、贈与税のほうが緩い制度に見えます。しかし、上記以外にも違っている部分があり、そこが贈与税の延納をやりにくくしているのです。

・延納の最長期間
相続税の延納期間が最長10年であるのに対し、贈与税の延納期間は5年以内と決まっています。そのため、高額な贈与税を延納しても、(利子税を含めると)あまり負担が軽くなることがないかもしれません。

・物納の有無
相続税は延納しても支払いきれなければ、相続財産そのもので納税する物納という手段があります。しかし、贈与税の延納にはそんな救済策がありません。

・利子税の利率
相続税の場合は、不動産など換金しづらい財産の比率によって、1.2%から6.0%の金利になっています。しかし、贈与税を延納した場合の利子税は一律6.6%と高い金利となっているのです。

贈与税はそもそも高額な上、上記のように負担を軽くする救済策が少なくなっています。
ただし、そもそも贈与税自体が相続税のように急に発生するものではありませんので、税金を支払えないような状況を作らないのが、一番の救済策と言えるでしょう。

【参考】
国税庁 相続税法基本通達 第38条
国税庁 タックスアンサー No.4429 贈与税の申告と納税

チェスター相続クラブ

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