現金よりも不動産の贈与がお得な理由
そもそも税金というのは、多くの利益を得れば得るほど税金も大きくなるという仕組みになっています。これは贈与税も例外ではなく、たくさんの財産を贈与されればされるほど贈与税として払わなければならない金額は大きくなります。
しかしこれは逆に言えば「贈与される財産の金額を出来るだけ小さく抑えれば贈与税の額も少なくて済む」ということになります。そして贈与税の計算においては、現金を贈与する場合と不動産を贈与する場合とでは、仮に同じ金銭的価値の贈与であっても不動産を贈与した場合の方が「贈与される財産の金額を出来るだけ小さく抑える」とが出来てしまいます。
1.なぜ現金の贈与よりも不動産の贈与が「お得」なのか
贈与税を節約するには現金よりも不動産を贈与した方が節税効果が高いといえます。場合によっては数千万円単位の差が生じることも珍しくありません。
そもそも贈与税を計算する際には、まず「贈与された財産価額-基礎控除額110万円」で「課税価額」を算出した上で、「課税価額×税率-控除額」で最終的な金額を弾き出します。
同じ金額の現金の贈与と不動産の贈与で贈与税の額が大きく異なるのは、上記計算式における「贈与された財産価額」の算出方法に秘密が隠されています。
(1)現金は贈与した金額そのものに贈与税が掛かる
まず現金を贈与した場合ですが、これは贈与した金額そのものが「贈与された財産価額」になります。
仮に現金1億円を贈与したとすれば、「贈与された財産価額」は1億円、ということになります。1億円贈与されたのであれば、その1億円に対して贈与税が発生するのは当たり前と言えば当たり前の話しですが、不動産を贈与した場合はこのように単純な計算とはなりません。
(2)不動産は取引価額や建築費用そのものに贈与税が掛かるわけではない
次に不動産を贈与した場合の「贈与された財産価額」の算出方法ですが、土地の場合は路線価もしくは固定資産税評価額を、建物の場合は固定資産税評価額を用いて計算することになっています。これらは実際の市場価額に対して土地は約7割から8割、建物は約6割程度の範囲に収まるように調整されています。
現金を贈与するよりも不動産を贈与した方が節税効果が高い理由はずばりここにあります。現金1億円の贈与は1億円そのものに対して贈与税が掛かるのに対して、土地と建物を合計して1億円の不動産の贈与であれば6,000万円から7,000万円程度の評価にまで引き下げることが出来るわけです。
2.「1億円の現金」と「1億円の不動産」では贈与税が2,000万円も違う?
(1)「現金1億円」に掛かる相続税
まずは単純に、1億円の現金をそのまま贈与した場合にどのくらいの贈与税が発生するのかを考えてみましょう。
基礎控除額の110万円を差し引くと9,890万円となり、これが課税価額となります。課税価額3,000万円超の贈与には贈与税としては最高の税率となる55%が課税されここから400万円が控除されます。
つまり5,039万5,000円が贈与税として徴収され、4,960万5,000円が手元に残る、という計算になります。文字通り半分以上が税金として持って行かれてしまうわけです。
(2)「土地5,000万+建物5,000万」に掛かる相続税
次に5,000万円の土地の上に5,000万円の建物を建てた上でこの両方を贈与した場合の贈与税を計算してみます。
まず土地ですが、土地は路線価もしくは固定資産税評価額を用いて価額を計算します。これは実際の取引価額の7割から8割程度に収まるように設定されていますから、仮に5,000万円の土地であれば課税価額は3,500万円から4,000万円となる可能性が高いです。
建物の評価額は固定資産税評価額を用いて価額を計算します。これは新築したばかりでも建築額の概ね6割程度となり、年数が経てば経つほど評価額は下がっていきます。5,000万円の新築物件であれば課税価額は3,000万円程度になると思われます。
つまり合計1億円を掛けて取得した土地と建物を贈与した場合、贈与された側が納めることになる贈与税の課税価額を計算すると合計6,000万円から7,000万円程度にまで圧縮されてしまいます。
仮に6,000万円であれば贈与税は約2,900万円、7,000万円であれば約3,400万円、ということになります。現金1億円を贈与された場合の贈与税額が5,039万5,000円ですから、実に約1,600万円~約2,100万円程度贈与税が少なくて済む計算になります。
(3)不動産贈与には注意点も多数あり
ただし不動産を贈与すると上記のように現金よりもかなり有利になりますが、そもそもの贈与税額も大きくなってしまう点に注意が必要です。確かに不動産の方が現金よりも評価額が下がりますが贈与税額も高くなるため、不動産の生前贈与を行う人はレアケースだといえます。
さらに毎年110万円の範囲内で不動産の生前贈与を実施する方法も考えられますが、贈与税は0円でもその他に登記費用、登録免許税、不動産取得税等の付随コストも発生するため費用の負担感が大きいです。
このため一般的には不動産ではなく、現金等の金融資産を年間110万円の範囲内で贈与する人が多いのです。
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