贈与税を負担することなく自社株を贈与する方法

後継者不足による廃業や重い税負担による事業の縮小・廃業など、中小企業の事業承継にはさまざまな問題があります。これらの問題に対応して事業の円滑な継続を図るために、中小企業経営承継円滑化法が施行されました。あわせて定められた事業承継税制の一つに、非上場株式についての贈与税の納税猶予の特例があります。

1.自社株に係る贈与税の納税猶予

後継者が先代経営者から自社株の贈与を受けて会社を経営する場合には、自社株の贈与に係る贈与税のうち最大で発行済株式総数の3分の2に達するまでの部分について、納税が猶予されます。さらに、先代経営者の死亡等により、猶予されている贈与税は免除されます。つまり、贈与税を負担することなく後継者へ自社株を生前贈与することができます。

この特例の適用を受けるための要件は次のとおりです。要件は細かく規定されていますが、ここでは概要のみ紹介します。

● 先代経営者から全部または一定以上の自社株を取得する。
● 会社は次のいずれにもあてはまらない。
中小企業者でない会社、上場会社、風俗営業会社、資産管理会社、営業収入または従業員数がゼロの会社。
● 後継者は贈与時において次の要件を満たしている。
会社の代表権を有している。20歳以上である。役員就任から3年以上経過している。後継者および後継者と特別な関係がある者で総議決権数の50%超を保有し、かつこれらの者の中で最も多くの議決権数を保有することとなる。
● 先代経営者は次の要件を満たしている。
過去に会社の代表権を有していたが、贈与時において会社の代表権を有していない。贈与の直前において先代経営者および先代経営者と特別な関係がある者で総議決権数の50%超を保有し、かつ後継者を除いたこれらの者の中で最も多くの議決権数を保有していた。
● 会社、後継者、先代経営者の要件を満たしていることについて経済産業大臣の認定を受ける。
● 贈与税の申告期限までに特例の適用を受ける旨を記載した贈与税の申告書と書類を税務署に提出するとともに、贈与税額に見合う担保を税務署に提供する。
● 納税猶予から5年の間は毎年、その後は3年ごとに、税務署に継続届出書を提出する。

2.納税猶予が止められる条件

特例の適用を受けるための申告をした後も引き続き自社株を保有して会社を経営することで、納税の猶予は継続されます。しかし、納税猶予から5年の間に下記の要件にあてはまることになった場合は、納税が猶予されていた贈与税の全額とそれに係る利子税を納付しなければなりません。

● 贈与を受けた自社株の一部を譲渡または贈与した。
納税猶予から5年を経過した後に譲渡または贈与した場合は、譲渡した部分に対応する贈与税と利子税を納付します。
● 後継者が会社の代表権を有しなくなった。
● 雇用の平均数が贈与時の8割を下回った。
● 先代経営者が代表権を有することとなった。
● 会社が資産管理会社に該当した。
この場合は、納税猶予から5年を経過した後でも贈与税と利子税を納付します。

3.先代経営者が死亡したとき

先代経営者が死亡したときは、「免除届出書」と「免除申請書」を提出することにより、納税が猶予されていた贈与税は免除されます。これで贈与税の課税関係は終了しますが、相続が開始すると、自社株は相続税の課税対象になります。

贈与税の猶予の対象となっていた自社株は相続したとみなされ、相続時の価額ではなく贈与時の価額によって他の相続財産と合算して相続税額を計算します。その際、一定の要件を満たせば、相続税の納税猶予の特例の適用を受けることができます。相続税の納税猶予の特例は、自社株に係る相続税の課税価格の80%に対応する税額について納税が猶予され、後継者が死亡したときには免除されるものです。

4.事業承継へのメリット

この特例は、中小企業が相続や事業承継に係る重い税負担のために、事業の縮小や倒産に追い込まれるのを防ぐために制定されたものです。すでに後継者が決まっていて、今後も業容の拡大が見込まれる場合には、非常に有用な制度であるといえます。後継者に早めに自社株を贈与して経営のバトンタッチをすることで、後継者に責任感が芽生える効果も期待できます。

さらに贈与後に、会社が成長して自社株の評価額が高くなっても、先代経営者が亡くなったときの相続税評価は自社株を贈与したときの価額で行われるため、相続税の負担を抑えることができます。さらに、相続税の納税猶予の特例の適用を受けることもできます。事業承継をお考えの経営者の方は、特例の適用を検討されてはいかがでしょうか。

チェスター相続クラブ

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