土地の上に存する権利が競合する場合の農地の相続税評価

土地の上に存する権利が競合する場合とは、1つの土地に、2つの使用収益権が同時に設定されている場合のことをいいます。では、相続又は遺贈によって取得した農地に、土地の上に存する権利が競合する場合、その相続税評価はどのようにして行うのでしょうか。以下で解説します。

土地の上に存する権利が競合する場合の農地の相続税評価

土地の上に存する権利が競合する場合の農地の相続税評価とは、相続税評価の基本を定める財産評価基本通達(以下「評価通達」とします)第2章第3節(41-2)のことを言います。

そして、同規定は、以下の三つの評価によって構成されています。
(1)耕作権又は永小作権及び区分地上権の目的となっている農地の評価
(2)区分地上権及び区分地上権に準ずる地役権の目的となっている承役地である農地の評価
(3)耕作権又は永小作権及び区分地上権に準ずる地役権の目的となっている承役地である農地の評価

なお、土地の上に存する権利が競合するとは、具体的には、1つの土地に同時に2つの権利が設定されている場合のことをいいます。

以下では、上記の三つの評価について、それぞれ解説します。

耕作権又は永小作権及び区分地上権の目的となっている農地の評価

耕作権又は永小作権及び区分地上権の目的となっている農地の評価は、評価対象農地の自用地としての(いかなる権利も設定されていない状態とした場合の)評価額から、評価基本通達に従って評価した《農地に係る区分地上権の評価額》及び評価通達に従って評価した《土地の上に権利が競合する場合の耕作権又は永小作権の評価額》の合計額を控除した価額となります。

評価通達では、《農地に係る区分地上権の評価額》は、《宅地に設定される区分地上権の評価額》に準じます。

そして、《宅地に設定される区分地上権の評価額》は、区分地上権が設定されている宅地の自用地としての相続税評価額に、区分地上権設定契約の内容に応じた土地利用制限率に基づく割合(区分地上権割合)を乗じた価額となります。

例えば、地下鉄等のトンネル所有を目的とした区分地上権の場合には、この区分地上権割合は30%となるので、当該区分地上権の相続税評価額は、当該区分地上権が設定されている宅地の自用地評価額の30%となります。

一方、評価通達では、《土地の上に権利が競合する場合の耕作権又は永小作権の評価額》は、評価通達で規定する耕作権の評価額又は相続税法第23条の規定に従って評価した永小作権の評価額に、1から上記の《農地に設定される区分地上権の評価額》が評価対象農地の自用地評価額に占める割合を控除した数値を乗じた価額となります。

上記の耕作権の評価額は、耕作権が設定されている農地の自用地評価額に、評価通達別表で定める耕作権割合を乗じた価額とされていますが、別表で定める割合は50/100ですので、耕作権の評価額は、耕作権が設定されている農地の自用地評価額の50%ということになります。

一方、相続税表第23条で定める永小作権の評価額は、永小作権が設定されている農地の自用地評価額に、評価時点における永小作権の残存期間に応じて定める割合(5%から90%)を乗じた価額となります。

例えば、評価対象農地に耕作権と区分地上権が設定されており、評価対象農地の自用地評価額が500万円、区分地上権割合が40/100とすると、当該農地の評価額は、

500万円 -(500万円 × 40/100 +[500万円 × 50/100 ×(1 - 200万円/500万円)])=150万円
となります。

区分地上権及び区分地上権に準ずる地役権の目的である農地の評価

区分地上権及び区分地上権に準ずる地役権の目的となっている承役地である農地の評価は、評価対象農地の自用地評価額から、評価通達に従って評価した《農地に係る区分地上権の評価額》及び評価通達に従って評価した《農地に係る区分地上権に準ずる地役権の評価額》の合計額を控除した価額となります。

ここで、評価通達では、《農地に係る区分地上権に準ずる地役権の評価額》は、《宅地に係る区分地上権に準ずる地役権の評価額》に準じます。

そして、《宅地に係る区分地上権に準ずる地役権の評価額》は、当該区分地上権に準ずる地役権の目的となっている承役地である宅地の自用地評価額に、区分地上権に準ずる地役権設定契約の内容に応じた土地利用制限率に基づく割合(区分地上権に準ずる地役権の割合)を乗じた価額となります。

具体的には、当該区分地上権に準ずる地役権が設定されている承役地である宅地が、当該権利の設定によって建物の建築が不可能となる場合には、区分地上権に準ずる地役権の割合は50/100又は当該権利を借地権とした場合の借地権割合となり、当該権利の設定によって建物の建築に制限を受ける場合には、同割合は30/100となります。

さて、例えば、評価対象農地に区分地上権と区分地上権に準ずる地役権が設定されている場合で、当該農地の自用地評価額が500万円、区分地上権割合が30/100、区分地上権に準ずる地役権の割合を50/100とします。

この場合の評価対象農地の相続税評価額は、

500万円 -(500万円 × 30/100 + 500万円 × 50/100)= 100万円
となります。

耕作権又は永小作権及び区分地上権に準ずる地役権のある農地評価

耕作権又は永小作権及び区分地上権及び区分地上権に準ずる地役権の目的となっている承役地である農地の評価は、評価対象農地の自用地評価額から、評価通達に従って評価した《農地に係る区分地上権に準ずる地役権の評価額》及び評価通達に従って評価した《区分地上権に準ずる地役権が設定されている承役地に耕作権又は永小作権が設定されている場合の耕作権又は永小作権の評価額》の合計額を控除した価額となります。

さて、《区分地上権に準ずる地役権が設定されている承役地に耕作権又は永小作権が設定されている場合の耕作権又は永小作権の評価額》は、評価通達に従って評価した耕作権又は永小作権の評価額に、1から区分地上権に準じる地役権の評価額が評価対象農地の自用地評価額に占める割合を控除した数値を乗じた価額となります。

例えば、評価対象農地に区分地上権に準ずる地役権及び耕作権が設定されている場合で、当該農地の自用地評価額を500万円、区分地上権に準ずる地役権の割合を50/100とすると、
当該農地の相続税評価額は、

500万円 -(500万円 × 50/100 +{500万円 × 50/100 ×[1 - 250万円/500万円]})= 125万円
となります。

チェスター相続クラブ

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