遺産の分割によって受けた債権についての担保責任
債権も相続財産.
被相続人が何らかの債権を持っている場合、その債権は相続財産になります。遺産分割によりその債権を相続した場合、その債権が必ずしも回収できるものとは限りません。債権としては貸付金、売掛金などさまざまなものがあります。
債権が全額回収できなかったら.
たとえば500万円の売掛金債権を相続したとしましょう。その場合、相続財産としては500万円を相続したことになりますが、売掛金は現金ではないということに注意が必要です。実際に債務者から現金を回収するまでは不安定の財産であるということです。
売掛債権を回収しに行ったところ、債務者の資力がなく、たとえばその500万円の売掛金のうち200万円しか回収できなかったとします。そうなると、残りの300万円に関してはあきらめなければならないのでしょうか。このままでは不公平です。
相続人全員の担保責任.
そのような場合には、現金・預金や不動産を相続した相続人に比べて不確定な要素の多い、債権を相続した相続人が不利にならないための規定があります。民法第912条によって、共同相続人には遺産の分割によって受けた債権についての担保責任があります。つまり、その債権を取得した本人を含む相続人全員で、不足分の金額を負担しなければならないことになっています。
先の例で、もしも相続人が3人でそれぞれ等分に相続していたとすると、3人でその不足分300万円を担保することになります。本人もその3分の1を負担することになりますが、他の2人はそれぞれ100万円ずつを債権の相続人に払わなければなりません。
債務者の資力を判断する時期.
債務者の資力の判断については、既に支払いの期限が来ている債権については、遺産分割時の債務者の資力が基準になります。まだ支払いの期限が来ていない債権については、その支払いの期限になった時の債務者の資力を基準にします。確定していない債権を相続した者が不利にならないためです。
ただし、債権を取得した相続人が債務の履行を請求しないでいる間に債務者の経済状況が悪化して支払い能力がなくなり、債権を回収できなくなったような場合には認められません。担保責任があるのは、「その分割の時における債務者の資力」だからです。
民法第912条(遺産の分割によって受けた債権についての担保責任)
1 各共同相続人は、その相続分に応じ、他の共同相続人が遺産の分割によって受けた債権について、その分割の時における債務者の資力を担保する。
2 弁済期に至らない債権及び停止条件付きの債権については、各共同相続人は、弁済をすべき時における債務者の資力を担保する。
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