法定単純承認の事由がある場合の相続債権者
限定承認とは
まず限定承認と単純承認の違いについて理解しましょう。限定承認とは、わかりやすく言うとマイナスの財産を相続することを避けるための制度です。相続というと不動産や預金のようなプラスの財産を思い浮かべることが多いですが、そのようなプラスの資産を相続するだけではなく、被相続人のマイナスの財産である債務などを相続することもあり得ます。
このような被相続人のマイナスの財産を相続したことによって負担を受けないようにできるのが限定承認です。限定承認とは、「相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して」相続の承認を行うことです(民法第922条)。相続を知った日から3カ月以内に、相続人全員で家庭裁判所に申し出なければなりません。
これに対して、単純承認とは、プラスの財産、マイナスの財産の両方を相続することで、特に何もしないで通常の相続を行なった場合は、単純承認をしたことになります。また、このほかの選択肢として、プラスもマイナスも関係なく被相続人の財産を一切相続しない、相続放棄という選択肢もあります。
単純承認とみなされる場合
民法第937条の中に出てくる第921条第1号とは、相続人が相続財産の一部を処分した場合のことで、相続人が限定承認または相続放棄をした後でも単純承認をしたとみなされます。また同第3号は、相続財産を隠したり、知りながら目録中に記載しなかったりした場合のことで、これも単純承認をしたとみなされることになります。「共同相続人」とは、相続人が複数いる場合のすべての相続人のことです。
相続債権者の権利
限定承認の制度によりマイナスの財産を避けて相続した相続人に対しても、第921条第1号、第3号のような事由があれば、相続債権者は相続人の相続分に応じて債権の請求ができることになります。これによって、相続人が相続財産から自分にとってだけ利益となるような選択をすることを防ぎ、相続債権者の権利が不当に害されることを防いでいます。
(法定単純承認の事由がある場合の相続債権者)
民法第937条
限定承認をした共同相続人の一人又は数人について第921条第1号又は第3号に掲げる事由があるときは、相続債権者は、相続財産をもって弁済を受けることができなかった債権額について、当該共同相続人に対し、その相続分に応じて権利を行使することができる
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