署名又は押印が不能の場合

署名又は押印が不能の場合

遺言の方式について民法はその第981条で、特別な方式として「署名又は押印が不能の場合」についても遺言が有効なることが記載されています。
ただし民法第976条にある一般危急時遺言の場合は、証人は署名または押印が不能とは言い難いものがありますので、この署名または押印が不能な場合の特別な方式に該当しないと考えられます。
今まさに病気やその他の理由で生命の危機に直面している人が、口頭でもしくは通訳者を介して遺言を伝える場合、証人が3人以上立ち会う中で行われなければなりません。
ここで立ち会う証人が、署名したり押印したりするのが無理な状況であるとは考えにくいものです。
口頭で遺言の内容を聞いた書き写した証人は、遺言者や他の証人に読み聞かせたり見せて確認をとった後、署名押印するのですから、この場合が署名又は押印が不能であると認められないのが順当でしょう。
民法第977条から第979条における、伝染病隔離者の遺言や在船者の遺言、船舶遭難者の遺言の場合は、署名又は押印が不能でも有効とされます。
ただし、立会人や証人がいて、この署名又は押印が出来ないものについての事由について記載されていなければ無効となります。
解釈上は最低でも1人は署名又は押印がなされていなければならないとされています。
とはいえ証人自体も海上で遭難に直面している中で、悠長に遺言などを筆記し確認を取るなど無理な場合がほとんどでしょう。
そのような時には、遭難が終わった後、証人がその記憶をたどって遺言の趣旨といったものを記載して、署名または押印をしても良いとされています。
また遭難が終わって遺言者が生存していた場合、普通方式で遺言を残せるような状況から6ヶ月生存した時点で、危機的状況下で託されたこの遺言は無効となります。

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