遺留分権利者に対する価額による弁償
遺留分権利者の存在
被相続人が亡くなって、遺言により配偶者にすべての財産を相続させるとしてあっても、子どもなど他の法定相続人がいる場合、その遺言のまますべて相続できるとは限りません。相続人に遺留分権利者がいる場合には、遺留分減殺請求をされることがあるからです。
遺留分のある相続人
遺留分というのは、法定相続人の中でも一定の相続人が最低限相続できる財産のことです。被相続人は遺言によって自分の財産を好きなように相続させることができるというのが原則ですが、残された家族が遺産を受け取る権利も一定程度保証しようとするのが遺留分です。遺留分権利者になることができる相続人は、被相続人の配偶者、子ども、父母に限られます。
例えば、先の例で、遺言によって全財産を相続することになった配偶者の他に被相続人の子どもが1人いて、その子どもが被相続人の前妻の子どもで、遺留分を要求したとしましょう。そのとき、遺留分権利者である子どもは遺留分減殺請求ができます。遺留分は相続財産の2分の1ですが、この場合、他に遺留分権利者がいないとすれば配偶者と子どもだけなので、さらにそれぞれ2分の1ずつ、つまり相続財産の4分の1がその子どもの遺留分となります。
遺留分の価額弁償
相続財産が現金や預金である場合、その4分の1の金額を支払えばすむことですが、不動産しかない場合は、子どもはその不動産の4分の1の持分を得ることができます。例えば、その不動産が自宅しかないような場合、配偶者がそこに安心して住み続けるためには、すべてを自分の所有にしておきたいところです。
そんなとき、民法第1041条の価額賠償によって、4分の1に相当する金額をその子どもに支払うことによって、不動産はすべて配偶者のものになります。なお、その時の遺留分算定の基準になる価額は被相続人が死亡した相続時のものになります。つまり、相続時点でその不動産の価額が4,000万円であったとしたら、その4分の1の1,000万円を価額弁償として支払うことになります。
(遺留分権利者に対する価額による弁償)
第1041条
1.受贈者及び受遺者は、減殺を受けるべき限度において、贈与又は遺贈の目的の価額を遺留分権利者に弁償して返還の義務を免れることができる。
2.前項の規定は、前条第一項ただし書の場合について準用する。
関連性が高い記事
カテゴリから他の記事を探す
キーワード検索
入力されたキーワードに一致した記事を検索できます。