遺言による担保責任の定め

民法では、相続人が複数いる相続(それぞれの相続人を共同相続人と呼びます)の場合、それぞれの共同相続人の公平性を確保するため、他の共同相続人に対して相続財産の担保責任などを負っていることを定めています。
しかし同時に、それらの担保責任については「遺言で別に定められている場合は適用しない」とも規定しているのです。
これらの民法の意義について解説します。

1.相続人の公平性

まずは、相続人の公平性を確保するための民法について、詳しく解説します。

(1)共同相続人間の担保責任

民法では、商品を売る売主に対して、その商品に瑕疵(欠陥や問題)があった場合には、責任を負わなければならない担保責任があるという規定があります(買い手が損害賠償請求できるということです)。
これと同様に、民法911条では、共同相続人は、他の共同相続人に対して担保責任があると定めています。具体的な例を挙げましょう。

同順位の相続人AとBがいたとします。Aは預貯金1,000万円、Bは1,000万円と評価された不動産を相続しました。しかし、Bが相続した不動産に欠陥があり、実際の評価額が500万円だった場合、BはAに対して損害賠償請求を行うことができるです。

(2)遺産の分割によって受けた債権についての担保責任

相続する財産の中には、ときとして債権(借金などを回収する権利)が含まれています。この債権で得られる価額についても、公平さを保つ担保責任を各共同相続人は負っていることを定めてているのが、民法912条です。
債権をうまく回収できなかった場合、他の共同相続人が債務者に代わって負担する必要があるのです。こちらについても、具体的な例を挙げましょう。

AとBそれぞれが100万円の債権を相続しました。債権回収の結果、Aは債務者に経済力がないため20万円しか回収できませんでしたが、Bは100万円回収することができました。そのため、AはBに対して40万円を請求することができます。

(3)資力のない共同相続人がある場合の担保責任の分担

共同相続人の中に、経済的な余裕がない人が含まれていた場合については、民法913条で定められています。ある共同相続人の損害賠償請求に対して、通常はその他の共同相続人が公平に担保するのですが、共同相続人の中に担保する経済力がない人がいた場合、損害賠償を請求した共同相続人も含めて、残りの共同相続人で分担して担保するということです。具体的には以下のようになります。

Aは預貯金を1,000万円、Bは1,000万円の評価額の不動産、Cは1,000万円の債券を相続しました。
しかし、Bの相続した不動産評価額が500万円になってしまったため、Bは500万円の損害賠償請求を行いました。本来であれば、AとCがそれぞれ250万円ずつ負担しますが、Aは相続した財産をすべて借金の返済へまわして担保する経済力がありません。
このような場合には、Bは損害賠償請求を375万円に下げ、Cがそれを負担することで、公平性を保つわけです。

2.遺言による担保責任の定め

上記のように、民法では、共同相続人同士がお互いに担保しあえるように配慮した法律を定め、相続の公平性を保つように努めています。
しかし、これらの定めについて、民法914条にて「無効」にする規定が存在しているのです。
もし、遺言で担保責任に関わるようなものが残っている場合、そちらを優先して担保責任を負う必要がなくなるのです。具体的に考えてみましょう。

Aに預貯金1,000万円、Bに1,000万円の不動産が相続されたとします。このとき、不動産に瑕疵があって500万円の価値しかなかった場合、損害賠償請求ができるのが、民法911条です。
しかし、もし遺言に「誰も担保責任を負うことはない」旨の記載があった場合、Bは損害賠償請求を行うことができないのです。

これは、遺言者の遺志を最大限に尊重するという意味では価値のあることです。しかし、黙示の意思表示によって公平性が保てなくなることについては、問題がないとは言えません。

【参考URL】
民法

チェスター相続クラブ

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