死亡の危急に迫った者の遺言
遺言の効力が認められるためには、原則的には厳格に様式が決められていて、それ以外の様式は認められません。しかし、病気やその他の理由で、死期が迫っていて急を要する場合は、その限りではありません。
例えば脳梗塞によって半身不随になってしまった人が、自分で遺言を筆記したり、署名捺印出来なかったりという状況はあるでしょう。このように自分自身の力で遺言書の作成と完結ができなくなっている場合に、特別方式での遺言が認められます。
ただし、「満たすべき要件」があります。
病気などで死亡の危険性があるときの「一般の危急時遺言」
船舶に乗船しているときの「在船者の遺言」
船が沈没して死亡の危険性があるときの「船舶遭難者の遺言」
伝染病で隔離されているときの「伝染病隔離者の遺言」
などで特別方式の遺言ができるようになっており、民法976条から984条にかけて、その定めがあります。
「一般の危急時遺言」は、証人が3人以上立ち会う中で、その中の1人に対して遺言内容を口頭で伝えます。もし遺言者の口がきけないという状況下であれば、通訳人を介して証人は内容を筆記します。筆記した証人は遺言者及び他の証人に対して筆記した内容を読み聞かせたり閲覧させたりして、内容に相違がないかを確認します。
そして正確であった場合にこれを承認し、遺言書に署名及び押印をします。この遺言書が託された日から20日以内に、証人の内の1人、もしくは遺言の利害関係者から家庭裁判所に対して、遺言書の確認を請求します。この手続きをしなければ、無効となります。
家庭裁判所はこの遺言が遺言者の真意であるのかということの心証を得たのち、確認をします。遺言は大変ナーバスな問題を含みますので、「遺言者の意思に添っているのだろうか」ということを、状況などで判断しない限り、確認することはできないものです。この確認を得るためには「必要要件を満たしておく」ということが重要となります。
「船舶遭難者の遺言」は遺言者もさることながら、託される証人自体も危急的状況下にあるものです。危急時遺言であっても、上記のような一般の危急時遺言とは扱いが違い、要件が緩和されます。
まず船舶遭難者の遺言は証人の数が2人で(一般危急時遺言は3人)、遺言の方法が少し変わります。
そして家庭裁判所に対する遺言確認の請求の期限が違います。
一般危急時遺言の場合は遺言書が託された日から20日以内ですが、
船舶遭難者の遺言の場合は「遅滞なく」ということで、はっきりした日数の定めはありません。
ただ、どちらにしても遺言者が普通の方式で遺言をできるようになったときから6カ月生存していた場合は、特別方式の遺言は効力を生じなくなります。(民法983条)
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