船舶遭難者の遺言
船舶遭難者の遺言は、難船危急時遺言とも言われます
船舶遭難者の遺言は難船危急時遺言ともいわれ、通常の危急時遺言よりももっと簡単な方法で遺言を託すことが認められています。船が遭難し、生命の危機に瀕している状態は、遺言者ももちろんですが、証人や立会人となるべき相手が揃えられないどころか、その立場になる人ですら生命の危機に直面している状況です。
となれば、通常の危急時遺言のように、証人3人以上を揃え、口が聞けない場合は通訳者を介して筆記し、それを遺言者と証人が確認して遺言書に署名及び押印を行うといった手順すら踏めません。その状況を加味し、船舶遭難者が遺言する場合は、2人以上の前で口頭での遺言をするということが可能となります。
口が聞けない船舶遭難者であれば、その通訳者の通訳をもって遺言とします。これを筆記し署名及び押印を行うこととなりますが、この筆記・署名・押印すらも出来ない状況があるでしょう。
このような場合は遭難が終わったあと、証人の記憶に基づいて遺言の趣旨を書き起こし、そこに署名と押印をしたものでも良いとされています。
しかしこのように作成された遺言書が遺言者の真意に基づいたものであるかという判断は難しく、必ず家庭裁判所の心証を得て確認してもらうという請求を行わなければなりません。家庭裁判所の確認があって、ようやくこの遺言書の効力の有効性が認められることとなります。
しかし遺言者がこの遭難から幸いにも生還し、普通方式の遺言を作成できる状況となって6ヶ月以上生存していれば、その時点で難船危急時に作成された遺言は無効となります。
(船舶遭難者の遺言)
第979条
1.船舶が遭難した場合において、当該船舶中に在って死亡の危急に迫った者は、証人二人以上の立会いをもって口頭で遺言をすることができる。
2.口がきけない者が前項の規定により遺言をする場合には、遺言者は、通訳人の通訳によりこれをしなければならない。
3.前二項の規定に従ってした遺言は、証人が、その趣旨を筆記して、これに署名し、印を押し、かつ、証人の一人又は利害関係人から遅滞なく家庭裁判所に請求してその確認を得なければ、その効力を生じない。
4.第976条第5項の規定は、前項の場合について準用する。
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