財団たる医療法人に対する残余財産分配請求権の相続性
寄附行為で、医療法人が解散した場合の残余財産の請求権が寄付行為者又はその相続人に帰属すると定めている場合で、当該法人が解散しないうちに、寄付行為者が亡くなり、その相続人が残余財産請求権を取得した場合には、その相続に対して相続税は課税されるのでしょうか。以下で、解説します。
財団たる医療法人に対する残余財産分配請求権の相続性について
平成18年の医療法改正前に設立された医療法人については、当該法人が解散した場合には、寄付行為を行った者(法人に出資を行った者)又はその相続人が、当該法人の残余財産を取得することができました。
さて、法改正前に設立され、「本財団を解散した場合の残余財産は、設立時における寄付行為者又はその相続人に帰属するものとする」という寄附行為(社団における定款に相当するもの)が設定されている医療法人を想定します。
当該法人の寄付行為者は、法人が解散した場合の残余財産に対する請求権を有することになりますが、この寄付行為者が、法人が解散しないうちに亡くなった場合、この残余財産請求権は、上記の寄付行為によってその相続人に帰属します。
この残余財産請求権の相続について、相続税が課税されるかどうかについて、照会者から国税庁に対して質問が行われました。
これに対して、国税庁は、本件の残余財産分配請求権は、当該法人の解散をもって初めて
具体的な権利として確定するものであるので、法人が解散しない状態では、相続税の課税対象となる相続財産を構成しないと回答しました。
この質問及び回答が、国税庁の質疑応答事例「財団たる医療法人に対する残余財産分配請求権の相続性」となります。
寄附に対して贈与税が課税される場合について
上記の質疑応答のような問題が生じるのは、持分の定めのない医療法人に限られます。
持分の定めのある医療法人において、寄付行為者が亡くなってその相続人がその寄付行為者の持分を取得した場合には、その持分が相続税の課税対象となる相続財産であることは疑いがありません。
持分の定めのない医療法人であるからこそ、残余財産請求権が相続の対象となり、そこ結果、それが相続財産を構成するのか否かという疑問が生じます。
さて、このような持分の定めのない医療法人に対して、寄附が行われたとします。
この寄附によって、寄附を行った者やその親族等に課税される相続税又は贈与税の金額が不当に減少するような場合には、当該寄附を受領した医療法人に対して、贈与税が課税されます。
平成18年の医療法改正について
平成18年の医療法改正によって、改正後に設立される医療法人は、すべて持分の定めのない医療法人となりました。
また、医療法人が解散した場合に、解散した医療法人の残余財産の帰属すべき者は、以下に掲げる者に限定されることになりました。
1. 国
2. 地方公共団体
3. 財団である医療法人又は社団である医療法人で持分のないもの
4. 都道府県医師会又は市町村医師会
5. 病院を開設する者か病院を開設予定の者
従って、持分の定めのない医療法人で、残余財産の帰属者を寄付行為者又はその相続人
と定めているものは、平成18年の医療法改正前に設立された法人ということになります。
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