未成年者控除の控除不足額を控除することの可否
相続税には数種類の控除があります。その中でも、相続人が未成年だった場合に適用される「未成年者控除」は、他の控除とは違う特徴を持っています。
詳しく解説しましょう。
1.相続税の未成年控除
未成年の相続人の相続税計算では、以下の金額の未成年者控除が適用されます。
(20-未成年相続人の年齢)×10万円
相続人が相続開始時点で未成年だった場合、この金額を相続税額から控除することができます。ただし、未成年者控除の影響範囲は、その未成年者の相続税額だけではありません。
もし未成年者控除の控除額がその未成年者の相続税より多かった場合は、その未成年者の相続税額を上回った分の控除額を、未成年者の扶養義務者の相続税額から差し引くことができるのです。
なお、未成年者控除については、無制限納税義務者(相続開始時に日本国内に住所がある相続人)であった場合に適用されるもので、その未成年が制限納税義務者(相続開始時に日本国内に住所がない相続人)だった場合は適用されませんので、注意が必要です。
扶養義務者
未成年者の相続税額を上回った分の未成年者控除額を、相続税額から差し引くことができるのは、その未成年者の扶養義務者です。以下がそれに該当します。
・直系血族(父母や子)
・配偶者
・兄弟姉妹
・3親等内の親族のうち一定の者(家庭裁判所の指定する者など)
なお、扶養義務者が複数いる場合は、「未成年者の相続税額を上回った金額」をどう配分するかは扶養義務者同士が協議のうえ決定することになります。
2.未成年者控除の控除不足額を控除することの可否
上記のように、未成年者控除については、もしその未成年者の相続税よりも控除額の方が多ければ、相続税額を上回った分の控除額を、父母や子、配偶者などの相続税額から差し引くことができます。
ここで注意したいのが、上回った分の控除額を差し引くことができる扶養義務者の条件です。
例えば、身内が兄弟だけしかいない未成年者たちが相続した場合を考えましょう。
この場合、お互いが扶養義務者になりますので、理論上はお互いに控除しあうことができることになります。
もちろん、海外に住む兄と日本に住む弟のような場合でも同様です。兄は海外に住んでいるので、制限納税義務者となり、未成年であっても未成年者控除を受けることはできません。しかし、弟は未成年者控除を受けることができます。このとき、もし弟の未成年者控除額の方が相続税額より大きければ、その相続税額を上回った分の控除額を兄の相続税額から差し引くことができるのです。
このように、未成年者控除が相続税額を上回った分の金額を相続税額から控除できる条件は、「扶養義務者」かどうかということだけなのです。つまり血縁関係もしくは婚姻関係があるかどうかだけですので、それ以外の条件を考慮する必要はありません。
【参考】
国税庁 質疑応答事例 無制限納税義務者に係る未成年者控除の控除不足額を制限納税義務者である未成年者から控除することの可否
国税庁 タックスアンサー No.4164 未成年者の税額控除
国税庁 相続税法基本通達1の2-1(「扶養義務者」の意義)
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