遺留分減殺請求に基づき返還すべき額が確定した場合の課税価格の計算

遺留分減殺請求権に基づき返還すべき額が確定した場合、それによりその価額の返還を受ける者、又は、それにより価額を支払う者は、相続税の計算において、その受取額又は支払額をどのように扱うべきでしょうか。以下では、この問題について解説します。

遺留分と遺留分減殺請求について

遺留分とは、兄弟姉妹を除く相続人(遺留分権利者)が受けるべき相続財産の最低保障額のことをいいます。遺言書による相続で、他の相続人や受遺者に対する相続又は遺贈により、自らの遺留分を侵害された遺留分権利者は、遺留分減殺請求権を行使して、侵害された遺留分を取戻すことができます。

この遺留分減殺請求は、遺留分権利者が、この権利を行使する旨の意思表示を、遺留分を侵害する相続や遺贈を受けた者に対して行うだけで可能になります。裁判上の請求などその他の行為は必要ありません。

遺留分減殺請求があった場合の相続税の申告について

この遺留分減殺請求権を行使して、遺留分の返還を受けた者は、その者が取得した相続財産は当然増加します。その場合、相続税の計算においては、返還を受けた遺留分を含めて相続財産を計算し、それに基づいてその権利を行使した者が支払うべき相続税を確定しなくてはなりません。

また、相続税申告の期限後に遺留分減殺請求権による返還額が確定した場合には、相続財産に遺留分の返還額を含めた形で相続税額の計算をし直し、期限後申告や修正申告を行う必要があります。

一方、遺留分権利者から遺留分減殺請求権の行使を受けて、財産を返還した者については、
相続した財産から、遺留分減殺権の行使を受けて返還した財産を差し引いて、相続財産を算定し、それに基づいて計算した相続税額が納税すべき税額となります。

この場合も、遺留分減殺請求を受けて返還すべき財産の価額が確定したのが、確定申告の期限後の場合には、修正申告を行い、相続税の納税額の減額修正を行うことが可能です。そして、その場合には、返還した分の相続財産に課税されていた相続税については、還付を受けることができます。

相続時精算課適用財産に遺留分減殺請求権が行使された場合について

60歳以上の者が、20歳以上のその者の推定相続人又は孫に対して生前贈与を行う場合、
2,500万円までを贈与税非課税、2,500万円を超える部分については一律20%の贈与税を課し、贈与した者に相続が開始した場合に、相続財産の計算の際に、当該生前贈与に係る財産を相続財産に加えて相続税額を計算する制度があります。

この制度のことを「相続時精算課税制度」といいます。さて、相続時精算課税制度の適用を受けた受贈者(特定受贈者)が、その制度の適用を受けた財産について、遺留分減殺請求を受け、その価額の一部を遺留分権利者に返還する場合があります。

その際、この特定受贈者について相続税額を計算する際に、相続時精算課税制度の適用を受けた財産については、その価額から、相続時精算課税適用財産の贈与時の財産価額に、相続時精算課税財産の返還時の価額に対する遺留分減殺請求により返還した財産の価額の割合を乗じた価額を控除した額を相続財産に加えます。

相続時精算課税適用財産に遺留分減殺請求権が行使された場合の相続財産の計算例

例えば、相続時精算課税適用財産の贈与時の価額を2,000万円、遺留分減殺請求を受けて
遺留分権利者に返還した相続時精算課税適用財産の価額を210万円、相続税精算課税適用財産の遺留分減殺請求による返還時点の価額を2,100万円とします。

すると、特定受贈者の相続時精算課税制度適用財産から遺留分減殺請求権の行使により減額される額は、2,000万円×210万円/2,100万円=200万円となります。よって、遺留分減殺請求権の行使を受けた特定受贈者の相続税の計算において、相続財産に加算される相続時精算課税適用財産の金額は、2,000万円-200万円=1,800万円となります。

チェスター相続クラブ

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