チェスターNEWS -2015/07/14-
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外国人の相続税

日本の相続税の納税義務者(相続税を支払う義務のある人)は、「全世界の財産が対象となる人」と「日本の財産だけが対象となる人」に大きく分けることができます。
「全世界の財産が対象となる人」を無制限納税義務者といい、「日本の財産だけが対象となる人」を制限納税義務者といいます。
所在場所に関係なく、スイスの財産であろうが、パプアニューギニアの財産であろうが無制限に相続税の対象となるから無制限納税義務者となります。
逆に、日本の財産だけでいいよと財産の所在地に制限があることから制限納税義務者といいます。
無制限納税義務者か制限納税義務者かは、亡くなった人と相続人の住所、国籍、国内居住期間の3つの要素により決まります。
ケース別に確認してみましょう。
1. 亡くなった人の住所が日本にある場合(外国人も含む)
相続人が日本人でも外国人でもどこに住んでいても全世界の財産が相続税の対象です。すなわち、無制限納税義務者です。
【具体例】
アメリカ人のトムさん(40歳、独身)は、仕事の関係で日本に住所がありました。不幸な交通事故により日本で亡くなってしまいました。相続人はアメリカに住むアメリカ人の母親だけです。トムさんの財産は日本の金融機関の預金とアメリカの母親が住む不動産です。
トムさんの母親は無制限納税義務者に該当するため日本の預金だけでなくアメリカの不動産についても日本の相続税がかかるのです。
2. 亡くなった人の住所は海外だが、亡くなる前5年の間に日本に住んだことがある場合(外国人も含む)
この場合には相続人が下記のいずれに該当するかにより取り扱いが変わります。
①日本人(海外に住む日本人も含む)
→無制限納税義務者
②日本に住所がある外国人
→無制限納税義務者
③日本に住所がない外国人
→制限納税義務者
【具体例】
日本人の青木さんはマレーシアのクアラルンプールで2年前から老後生活を送っていましたが、今年、現地で病死しました。
青木さんの相続人は、
同じくマレーシアに2年前から住んでいる妻、
アメリカ人と結婚し、アメリカ国籍になった長女(日本居住)
イギリス人と結婚し、イギリス国籍になった次女(イギリス居住)
の3人です。
この場合、妻は上記①に該当し、長女は上記②に該当するため、日本にある青木さんの財産だけでなくマレーシアにある青木さんの財産にも相続税がかかります。
逆に、次女は上記③に該当し、日本にある財産にしか相続税はかからないのです。
3. 亡くなった人の住所が海外で、かつ、亡くなる前5年の間に日本に住んでいなかった場合(外国人も含む)
この場合にも相続人が下記のいずれに該当するかにより取り扱いが変わります。
①日本に住んでいる日本人
→無制限納税義務者
②海外に住んでいて、被相続人が亡くなる前5年間日本に住んだことがある日本人
→無制限納税義務者
③海外に住んでいて、被相続人が亡くなる前5年間日本に住んでいなかった日本人
→制限納税義務者
④日本に住所がある外国人
→無制限納税義務者
⑤日本に住所がない外国人
→制限納税義務者
【具体例】
ドイツ人のニーチェさんは生まれてこの方ずーっとドイツに住んでいます。日本には一度も来たことがありませんが、日本の不動産を保有していました。
ニーチェさんは今年の春に肺炎を患って亡くなりました。
ニーチェの相続人は、
別居中で日本に住んでいるドイツ人である妻、
日本人と結婚して日本人になり、日本に住所がある長女
ドイツ人でドイツに住む長男
の3人です。
この場合、妻は上記④に該当し、長女は上記①に該当するため、日本の不動産とドイツの財産ともに相続税がかかります。
逆に、次女は上記⑤に該当し、日本にある財産にしか相続税はかからないのです。
上記解説を表にしたものが下記になりますので、復習として確認して下さい。


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