チェスターNEWS -2013/07/09-
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贈与の判定

夫が稼ぎ、妻が家計をやりくりする。これは、どの家庭でも見られる光景です。家計の管理をしていく中で、夫の預金を少しずつ崩して妻の口座へと移す行為は、あまり疑問を持つことなく自然と行われています。
しかし、何の疑問も抱かずに行ったこの行為が、後で様々な問題を引き起こすことがあるのです。
妻の口座に移せば妻のお金になる?
妻が夫の口座から自分の口座にお金を移した数日後、急に夫が亡くなってしまった場合を考えてみましょう。
妻は配偶者ということで、当然に夫の財産を相続します。移したお金は彼女の名義で作った口座に入っているので、妻の財産となり相続財産には含まれないような気がします。
もしこれが相続財産だということになると、相続税が課される可能性も出てくるため、妻にとってその判断はとても重要になるのです。
ただ移しただけなら夫の財産のまま
夫婦の財産は、その扱いが法律できちんと定められています。民法では「夫婦別財産制」の定めがあり、「婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産はその特有財産とする」とされています。
つまり、夫が結婚前に働いて得たお金を自己の名義で作った口座に貯金していた場合は、その財産は夫の財産であって妻の物にはならないのです。
すると、先程の事例では、口座を移動させたとしてもそのお金は夫の財産のままなので、相続財産として扱わなければなりません。
贈与として認められるには?
夫婦間のお金の動きを贈与と考える方法もあります。贈与が成り立つためには、次の二つの条件を満たす必要があります。
① 両者の間で、「あげた」「貰った」という意思があること
贈与は、両者の合意がなければ成り立たちません。この合意は口頭でも問題ないとされているので、夫婦間の口約束でも有効になります。しかし、口頭だけでは本当に贈与があったのかを知ることは難しく、後から証明するためにも、書類を作成して証拠を残しておいた方が安心です。
② 貰った方が、その財産を自分の物として管理・運用・使用しているか
もし贈与したお金を入れた口座の通帳と印鑑を夫が持ったままであれば、妻は自由にお金を使うことができませんよね。そうなると、妻が自分の物として管理していると見るのは難しくなります。他にも、実際の妻の住所と金融機関に登録してある住所が同じであること等も、条件に当てはまっているかを判断する材料になります。
妻と亡くなった夫の間には、①の合意がありませんでした。そのため、贈与は成立しないということで、妻が移した財産は相続財産として扱うことになります。

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