チェスターNEWS -2016/07/04-
さまざまな税についてのニュースを発信いたします。
関連キーワード: 税務調査
相続開始直前に購入した投資用不動産の相続税評価について

相続発生の直前に、不動産を購入した場合、その不動産はどのように評価すれば良いのでしょうか。財産評価基本通達に従って、通常通り評価をしても良いのでしょうか。もしくは、購入金額に近い時価での申告が必要となるのでしょうか。
ここでは、相続開始直前に購入した投資用不動産の相続税評価について理論的に解説していきたいと思います。
1.直前に購入したモノでも原則は財産評価基本通達通りに評価
例え、相続開始直前に購入したものであっても、原則は通常通り、財産評価基本通達通りに相続税評価を行います。
相続開始直前に購入したからといって時価で評価しなければならないという規程はありません。但し、法人が購入した不動産については相続開始3年以内であれば相続税評価ではなく時価で評価しなければならないという規程がありますので注意が必要です。
2.税務署に指摘を受ける可能性があるとすれば「総則6項」
総則6項とは、財産評価基本通達 第1章総則6項(この通達の定めにより難い場合の評価)の通称です。以下のように書かれています。
財産評価基本通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する。
つまり、財産評価基本通達に従わない例外の規定がここにありますが、具体的にどういう場合がこれにあたるのかの例示はありませんので、今回のケースの場合で気を付けるべき点を次項で解説します。
総則6項について詳しく知りたい方は、「「総則6項」とは?税務署の伝家の宝刀!!」を参照して下さい。
3.気を付けるべき2つの点
3-1.購入時に被相続人の意思能力はあったか?
実は被相続人はすでに認知症になっていたり意識不明になっていたりと、不動産の購入時点で意思能力がなかった場合には要注意です。
不動産の購入自体を、被相続人ではなく、相続人が勝手に行った行為とみなされる可能性があります。その場合は、相続税評価においては不動産の財産評価基本通達通りの評価が行えない可能性があるでしょう。
3-2.相続発生後~税務調査の間に売却していないか?
相続開始直前に購入した不動産を、相続発生後に売却して換金していた場合。
この場合には、前項の総則6項の規定にひっかかる可能性があります。
かつて、同じような事例で納税者が敗訴している判例があります。
ただ、売却したから100%ダメと言うわけではなく、あくまで程度の問題も実務においてはあると思います。
4.まとめ
相続税の節税対策は難しいです。杓子定規にいかないものです。
素人判断で、いけるはずだ、と判断するのは非常に危険ですので、必ず経験が豊富な税理士に相談をするようにしましょう。

【次の記事】:シンガポールには相続税という税制がない
【前の記事】:「名義預金」か「生前贈与」かの判定方法