チェスターNEWS -2016/12/05-
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遺言で取得の土地に小規模宅地の特例を使いたいが選択同意書の添付は?

相続税には、その相続した者の背景によって様々な特例があります。配偶者であれば配偶者の税額軽減、農地を相続すれば農地の納税猶予などです。その中でも特に使用頻度の高い特例に「小規模宅地特例」があります。こちらの特例は居住用の土地でしたり、貸付事業を行っている敷地について、土地の評価額を軽減してくれる特例です。
この特例については、複数の土地について適用が可能な場合、すべての相続人にどの土地に特例を適用するか、同意を取ることが必要であると規定されています。(措令40の2⑤三)
取得する土地の評価額が特例により軽減されることで各人が支払う相続税に大きな変更を及ぼすためです。
さて、その選択同意書について、先日一つの判決が出されました。
平成28年7月22日東京地裁の判決によると、
①相続人Aが遺言によって土地(特例対象地)を取得
②他の未分割財産のうち、別の土地(特例対象地)がある
この場合、特例を適用する場合は選択同意書の添付が必須条件であるという判決です。
相続人Aは、財産が未分割の場合は、未分割の上申書を提出したうえで、「分割協議が整った時点」で選択同意書を取得し特例を適用するという方法があることに対し、遺言により取得した場合にはそのような方法がないことは立法上の不備であると指摘しており、他の特例対象地が未分割であることから、特例対象地等の全てを取得しているのは相続人Aのみであり、選択同意書の添付は不要であると主張しています。
その主張に対して、裁判所は、選択同意書を添付することが難しい場合は、今回のように遺言によって特例対象地を取得する場合以外にも一般に生じる可能性があるとし、特例適用に関して、特例対象地が遺言対象となっている場合にのみ不利益に取り扱われるということはできないと判断しています。
他の相続人も現状未分割になっている財産を取得した場合に小規模宅地特例を適用できる場合にはその取得の際に選択の同意を行うことが予想されることが考えられるためでしょう。

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