チェスターNEWS -2017/04/11-
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相続税の物納財産の拡充と順位の変更【平成29年税制改正】

相続税を納付する際に現金ではなく物納を選択する場合に、物納できる財産の順番や物納財産の範囲が決められています。
物納財産の順位は国債・地方債・不動産・船舶が第一順位とされていて、従来株式等については第二順位でした。
平成29年税制改正では、株式・社債・証券投資信託等の受益証券のうち、上場されているものの順位が第一順位に繰り上がります。また、改正前は対象外であったJ-REITも第一順位の仲間に入りますので、物納の幅が広がりました。
実務をやっていると相続税の評価時点では高かった株式の評価額が、申告納税するまでに値下がりしてしまった、との声を相続人からお聞きします。物納財産の評価額は申告時点の時価ではなく、相続時における相続税評価額になりますので、上場株式等で物納すれば申告期限までの評価損は相続人が負担せずに済みます。
また、手放したくない土地の物納を考えていた方にとっては、上場株式等の順位が土地と同順位になりましたので、土地を持ち続けることができます。上場株式は売却・換金すると
譲渡所得税が課税されますが、物納の場合、譲渡はなかったとみなされ、課税はありません。
一方、不動産のうち物納劣後財産しかないケースで、これを物納に充てようと計画していた方が上場株式等を所有している場合には、物納劣後財産よりも上場株式等の方が、物納順位が高くなりますので、物納劣後財産を相続税に充てることができなくなります。
改正の趣旨の一つとして、物納制度を拡充することにより、価格変動が激しい株式等を取得する場合の納税リスクの軽減と納税資金を確保することにありますので、資産構成を見直すきっかけにもなるかと思います。
なお、29年度税制改正項目のひとつとして議論されていますが、改正時期については未公表です。

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