チェスターNEWS -2017/08/22-
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小規模宅地等の特例適用には相続人全員の同意が不可欠

同意書の添付がない場合における小規模宅地等の特例の適用可否が争われた事件は、平成29年1月26日に東京高等裁判所において請求人(納税者)の主張が斥けられました。
概要
請求人は遺言により取得した宅地に小規模宅地等の特例を適用して相続税の期限内申告書を提出しました。相続財産の中には、この宅地のほか遺言の対象ではない未分割の特例対象宅地等がありました。請求人はこの申告の際、措置法令40条の2第5項に規定する同意書の添付は行いませんでした。
これに対し原処分庁が、特例対象宅地等を相続したすべての相続人の同意がないため、同規定の適用はできないとして更正処分及び過少申告加算税の賦課決定を行ったところ、請求人が更正処分の全部の取り消しを求めました。
請求人の主張
措置法69条の4第4項のただし書きに規定にする特例対象宅地等は未分割財産(3年以内分割)であることが前提であり、遺言により取得した特例対象宅地等はこの規定の適用ができないという問題点を指摘しました。
また、本件においては、
①遺言書の効力についての訴訟中に他の相続人の同意を得ることは不可能である
②遺言対象宅地に同規定を適用することが最も有利である
③他の相続人も②の事実を理解し、①の訴訟が終了した時においても反対していない
という点から、適用を認めるべきだと主張しました。
裁決
以下の理由から請求人の主張は斥けられました。
①「請求人が主張するような個別事情がある場合においても」、同規定には「例外的に同意を証する書類の添付が必要でないとする規定はな」く、「措置法は、本来課されるべき税額を政策的見地から軽減するものであるから租税負担公平の原則に照らし、その解釈は厳格にされるべきものであり、みだりに実質的妥当性や個別事情を考慮して拡張解釈をすることは認められない」。
②分割確定後に「他の特例対象宅地等を選択する相続人がいた場合には、結果として相続人ごとに課税価格が異なってしまい、課税価格を確定できない結果の生じる可能性を認めることにほかならない」。
最後に
小規模宅地等の特例の適用における相続人全員の選択同意書は、すべての特例対象宅地等が未分割である場合には、分割が決定した時点で必要になります。
一方、分割が確定した特例対象宅地等(遺言対象の特例対象宅地等を含む)と未分割の特例対象宅地等がある場合において、分割された特例対象宅地等について同規定の適用を受けようとするときは、相続税の申告書に共同相続人全員の選択同意書を添付することが求められる点には注意が必要です。

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