チェスターNEWS -2017/10/24-
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広大地評価通達改正による新旧比較

平成29年6月22日付で国税庁が発表した『「財産評価基本通達」の一部改正(案)に対する意見公募手続の実施について』において、現行の財産評価基本通達24-4(広大地の評価)を削除し、新通達20-2(規模の大きな宅地の評価)を新設して平成30年1月1日より適用を開始する予定であることが明らかにされました。
(既報:チェスターNEWS http://chester-tax.com/column/5932.html)
その後、平成29年9月20日付で改正通達が公表されています。
では、適用まであと3ヶ月と迫った新制度移行により、評価対象地がどのような場合に現行制度よりも評価額が増額となり、また減額となるのでしょうか。
(1)評価額が増額となるケース
①広大地の評価が適用できる形の良い土地
(設例)

《現行通達24-4》
200,000円 × 0.525(※1広大地補正率)×1,500㎡ = 157,500,000円
※1 0.6 - 0.05 × 1500/1000 = 0.525
《新通達20-2》
200,000円 × 0.89(改正後奥行価格補正率)× 0.76(※2規模格差補正率)
× 1,500㎡ = 202,920,000円
※2 (( 1,500 × 0.90 + 75 )/ 1,500 )×0.8 = 0.76
上記のとおり、相続開始日または贈与日が平成29年か平成30年かの違いで約4,500万円もの評価額の差が出ることになります。新制度では、現行通達24-4との重複適用が認められなかった不整形地などの各種補正率の適用が可能ですが、概ね評価額は増額の傾向にあります。
②中小工場地区の土地
新通達20-2では、現行通達24-4で要件を満たせば適用が可能であった中小工場地区内の土地が排除され、適用可能地域が普通住宅地区と普通商業・併用住宅地区に限定されています。
これにより、ものづくりの街として有名な東京都大田区や大阪府東大阪市などの中小工場地区内の土地は、新通達20-2の適用が出来なくなるため、結果として評価額が増大する可能性があります。
(2)評価額が減額となるケース
①マンション適地に該当する土地
現行通達24-4では、マンション適地に該当する土地、又は既にマンション等の敷地として開発された土地については適用ができませんでした。また、原則として指定容積率300%以上の土地はマンション適地に該当するとされており、適用ができませんでした。(基準容積率で例外的に適用可)
新通達20-2では、マンション適地がどうかの判断は不要となり、容積率の制限も指定容積率が400%(東京23区は300%)未満と緩和され、マンション適地であったとしても要件を満たせば新通達20-2の適用を受けることができます。(基準容積率による適用は不可)
②公共公益的施設用地の負担が必要のない土地
現行通達24-4では、開発行為を行うとした場合、公共公益的施設用地(公園や道路など)の負担(いわゆる潰れ地)が必要であると認められなければ適用できませんでした。新通達20-2ではそうした判断も不要となっているため、例えば、間口が広い土地で開発道路が不要な場合でも適用ができることになります。
今回、広大地の評価が新制度へ移行する影響として一部をご紹介いたしましたが、税額へのインパクトが大きいため、現行通達24-4の適用が可能な土地を所有されている方は、新制度の運用が開始される前の平成29年中に贈与しておくといった検討が必要かもしれません。

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