チェスターNEWS -2015/03/11-
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相続放棄をしても退職金はもらえるのか
1.本来の相続財産とみなし相続財産
相続財産は、民法上の財産(本来の相続財産)と相続税計算上の財産(みなし相続財産)に大別することができます。土地、建物、現金、預金、自動車などほとんどの財産は本来の相続財産に該当します。一方、下記のような財産については、原則として本来の相続財産には該当しません。
- ① 死亡保険金
- ② 死亡退職金
- ③ 生命保険契約に関する権利
- ④ 定期金に関する権利 など
本来の相続財産とみなし相続財産の一番の違いは、遺産分割の対象となるかどうかです。みなし相続財産は、相続税を計算するために相続財産とみなしているにすぎないため遺産分割の対象とはならずに、契約、規約上の受取人の固有財産に該当します。
なお、上記4つのうち、死亡退職金については、退職金規程が会社ごとに異なるため一概にすべてがみなし相続財産に該当するとは断定できません。過去の判例においても受取人固有の財産と判断されたものもあれば、本来の相続財産として遺産分割の対象とされたものも存在します。したがって、案件ごとに退職金規程を確認し、個別に判断する必要があります。
2.相続放棄とみなし相続財産
被相続人に多額の借金がある場合や遺産争いに巻き込まれたくないなどの理由で相続放棄をする相続人も存在します。相続放棄には期限があり、相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内となります。この期限までに相続放棄をする者は家庭裁判所に申述しなければなりません。相続放棄をすると被相続人に係る一切の権利、義務を承継できなくなります。預金や不動産も相続できませんし、借入金も負担する義務がなくなります。
それでは、上記1に掲げるみなし相続財産についても受け取れないのでしょうか。既に解説したようにみなし相続財産は受取人固有の財産であり、民法上の相続財産ではないため相続放棄をしたとしても受け取ることが可能です。したがって、退職金についてもみなし相続財産に該当すると判断された場合には、その受取人が相続放棄をしていたとしても受け取ることができるのです。
3.相続税計算上の注意点
みなし相続財産に該当する死亡退職金については、相続放棄をしても受け取れることはわかりましたが、相続税計算上注意すべき点はないのでしょうか。
死亡退職金には、残された家族の生活を保障する大事な役割があるため、相続税計算上下記の非課税枠が設定されています。
「500万円×法定相続人の数」
ただし、この非課税枠を使える人は、相続人に限られています。すなわち、相続放棄により相続人に該当しなくなった者が死亡退職金を受け取ったとしても上記の非課税枠は使えずに退職金の全額が相続税の対象となってしまうのです。ちなみに、相続放棄をしたとしても上記算式の「法定相続人の数」は、相続放棄がなかったものとした場合の「法定相続人の数」となる点にも注意が必要です。


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