チェスターNEWS -2015/03/13-
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物納の撤回について
相続税が発生する場合、相続財産の金額や相続税の納付額は当然気になるところだと思います。しかし、相続税が発生する場合には、相続財産の種類にも注意しなくてはいけません。なぜなら、基本的に相続税は一括での金銭納付を強いられますので、財産の中に占める金融資産の割合が少ない場合には、相続人の金融資産や相続する不動産等を売却するなどして相続税額を用意しなければならないからです。
しかし、相続税申告は相続が発生してから10ヶ月以内という期限がありますので、その期限内に、遺産分割・売却・申告を行うことが難しい場合もあります。そこで認められているのが延納と物納です。
1.延納と物納
延納
納付すべき相続税額が10万円を超え、期限内に一括で納付することが困難である場合に、相続税を分割して支払う方法です。延納が認められるためには、担保提供などの要件がある上に、利子税がかかりますので、結果的に、銀行などから借入した方が低く抑えられる可能性もあります。
物納
延納によっても金銭で納付することが困難である場合に、相続した財産の中から、国債、地方債、不動産等の現物によって納付する方法です。なお、延納から物納への変更は認められませんが、物納から延納への変更は可能です。
2.物納の撤回について
相続税納付の例外として物納と延納が認められておりますが、不動産での物納の場合、その後撤回ができることはご存知でしょうか。
通常、物納を希望する場合には、相続税の申告期限(10ヶ月)以内に、物納申請書という書類を提出し、期限後3ヶ月以内に税務署が許可か却下かの判断を下します。この期限内に物納申請を取り下げることができるのは当然ですが、たとえ許可された後だとしても、撤回が可能なのです。
撤回の要件は以下の通りです。
- 1. 賃借権が設定されている土地・建物であること
- 2. 対象となる不動産が換価または公用・公共の用に供されずに現存していること
- 3. 許可後1年以内であること
- 4. 物納を撤回したとしても、金銭での一時納付ができるか、延納への変更許可が受けられること
以上の流れをまとめると下の図のようになります。

このように、税務署としては、現預金などの流動性のある資産が少ない場合や、相続人の間で遺産分割が難航している場合を考慮し、納税方法により、歩み寄りを図っております。ただし、物納要件を整える必要はありますし、物納する対象物件を選ぶことに時間がかかることもあります。また、物納はあくまで、相続税評価額(時価の80%程度)で計算されますので、売却し、その売却金額で相続税を支払う方がお得である可能性もあります。
つまり、状況に応じて、適格に判断されなくてはなりませんので、物納や延納の可能性が少しでもある場合には、お近くの専門家へご相談されることをおすすめします。


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