裁判確定前の相続分についての相続税法上の取り扱い
相続が開始されると、早急に遺産分割協議を進めて、相続人それぞれがどの遺産を引き継ぐかを決めなければいけません。なぜなら、それぞれの相続人が相続する財産の価額が分からなければ、相続税の計算ができないからです。
しかし、その話し合いが難航して、裁判に発展することも少なくありません。また、相続人の廃除や取り消しなど、相続人が相続する権利についても裁判を行う必要があることもあります。
そうなってしまうと、当然ですがそれらの裁判が確定するまで、遺産分割協議は中断することになるでしょう。
この裁判ができるだけ早く決着するようにすることは重要ですが、それ以外にも裁判が起きたせいで気になることが幾つも出てきます。
その1つが、賃料などの収益(果実)を生む財産です。
裁判確定前の相続分についての相続税法上の取り扱い
裁判が確定すると、相続人ごとの相続分が確定します。そうなると、特に問題なく遺産分割ができると思われがちです。
しかし実は、上述した「賃料などの果実を生む財産」が問題を生んでしまいます。
「賃料などの果実を生む財産」は、当然ながら相続開始から裁判確定するまでの間にも果実を生んでいます。そして、その果実ももちろん相続財産に含まれることになると考えるでしょう。それらの果実は、誰が相続するのでしょうか?
これがまた相続の問題を生んでしまうのです。
裁判確定前の相続分
相続税基本通達11条2-4では、相続税申告時には相続開始時の財産を基準として納税額を申告することとなっています。つまり、相続開始後に発生した果実については、ここに含む必要がありません。
しかしこれでは、その果実を誰が取得するのかという点が問題となります。
その点については、「最高裁判所第一小法廷平成17年9月8日判決」で示されています。その中では、相続開始から遺産分割までに生じた果実については、相続財産とは別の財産であり、相続人が相続分に応じて個別に取得するとされているのです。
つまり、遺産分割の前までに生じた果実は、該当の財産を取得した相続人が、相続開始まで遡ってすべて相続することはできないということになります。
ただし、相続人全員が果実を遺産分割の対象だと認めた場合は、そうとは限りません。その場合は、果実も遺産分割の対象として一部の相続人に帰属させることもできるという判例もあります(東京高等裁判所昭和63年1月14日判決など)ので、注意しなければいけません。
【参考】
国税庁 相続税法基本通達11の2-4(裁判確定前の相続分)
裁判所 最高裁判所第一小法廷平成17年9月8日判決
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