相続税と債務控除
相続人と包括受遺者は、預貯金・不動産などの資産(プラスの財産)だけでなく、借入金などの債務(マイナスの財産)も引き継がなければなりません。包括受遺者とは、相続人以外の人で、遺言によって「全財産の3分の1を遺贈する」というように割合の指定を受けて財産を受け取る人のことをいいます。
相続税の課税価格を計算するときは、相続財産から一定の債務と葬式費用を差し引くことができます。これを債務控除といいます。
1.債務の一例
(1)債務となるもの
相続財産から差し引くことができる債務は次のようなものです。
● 借入金
● 未払税金(延滞税、加算税等は除く)
● 未払医療費
● アパート等の預かり敷金
未払税金については、納付期限が被相続人の死亡後であっても、死亡前に納税義務が確定したものであれば相続財産から差し引くことができます。
(2)債務とならないもの
次のようなものは、債務として相続財産から差し引くことはできません。
● 墓地購入の未払金など、非課税財産にかかる債務
● 保証債務
● 遺言執行費用や弁護士・税理士費用
● 物納のための土地測量費用
墓石や墓地は相続税の非課税財産にあたるので、それらにかかる債務を相続財産から差し引くことはできません。
2.葬式費用の一例
(1)葬式費用となるもの
相続財産から差し引くことができる葬式費用は次のようなものです。
● 死体の捜索又は死体や遺骨の運搬にかかった費用
● 遺体や遺骨の回送にかかった費用
● 葬式や葬送などを行うときやそれ以前に火葬や埋葬、納骨をするためにかかった費用
● 通夜の費用など、葬式などの前後に生じた出費で通常葬式などにかかせない費用
● 葬式に当たりお寺などに対して読経料などのお礼をした費用
仮葬式と本葬式を行ったときにはその両方にかかった費用を差し引くことができます。
(2)葬式費用とならないもの
次のようなものは、葬式費用として相続財産から差し引くことはできません。
● 香典返しのためにかかった費用
● 墓石や墓地の買入れのためにかかった費用や墓地を借りるためにかかった費用
● 初七日や法事などのためにかかった費用
3.債務控除の対象者
相続人や包括受遺者が引き継いだ債務と負担した葬式費用は、相続財産から差し引くことができます。
相続を放棄した人や欠格や廃除によって相続権を失った人が引き継いだ債務は、相続財産から差し引くことができません。ただし、遺贈によって財産を取得した場合で葬式費用を負担したときは、相続財産から葬式費用を差し引くことができます。
なお、被相続人、相続人ともに5年以上海外に居住している場合のように、相続人が制限納税義務者である場合は、国内財産を取得したときに、その財産に係る一定の債務のみを差し引くことができます。葬式費用を差し引くことはできません。
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