相続税法第32条第1項の規定に基づく更正の請求
相続税の申告と納付の期限は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10カ月以内と定められています。相続人はこの期限までに遺産分割を終えて相続税の申告と納付をしなければなりませんが、期限までに遺産分割協議が調わないケースも考えられます。
一例として、相続税の申告期限までに遺産分割協議が調わず、そのあとの遺産分割の結果、相続人のうちの一人が相続放棄をした場合について説明します。
1.申告期限までに法定相続分で取得したものとみなして申告・納付する
申告期限までに遺産分割協議が調わない場合、相続税法第55条の規定により、各相続人が民法の規定による法定相続分で相続財産を取得したものとみなして、相続税の計算を行い申告・納付します。遺産分割が成立していないことを理由に申告期限が延長されることはありません。
相続人どうしでの話し合いでは解決する見込みがない場合は、家庭裁判所に調停を申し立てることになります。調停とは、家庭裁判所で裁判官と調停委員2名が当事者に加わり、話し合いによって分割を成立させるものです。成立すると、遺産分割協議書に代わって調停調書が作成されます。
調停によっても分割が成立しない場合は審判手続きに移行し、家庭裁判所の審判によって分割されます。審判が確定すると審判書が作成されます。審判ではほとんどの場合、法定相続分で分割することになるといわれています。
2.相続放棄の場合は分割成立後に更正を請求すれば還付される
遺産分割の結果、相続人のうちの一人が相続放棄した場合、期限までに納めた相続税はどうなるのでしょうか。
相続人のうちの一人が相続放棄をした場合、その相続人は相続財産を受け取らないことになります。この場合、相続税法第32条第1項の規定に基づく更正の請求が認められ、納めた相続税は還付されます。一般に更正の請求は相続税の申告期限から5年以内にすることができますが、相続税法第32条第1項の規定に基づく更正は、遺産分割が成立したことを知った日の翌日から4カ月以内に請求することができます。
では、相続放棄した相続人以外の相続人についてはどうなるのでしょうか。
相続放棄した相続人以外の相続人は法定相続分よりも多い相続財産を受け取ることになります。したがって、相続税の額が増えることになり、修正申告をすることができます。この場合、延滞税は課税されません。また、事由が正当と認められるときは過少申告加算税も課税されません。
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